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渦巻く滄海 紅き空 【下】
四十一 侵攻
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をあっさり破り、侵入した男達の姿を生きてその眼に映す者は今やいない。


誰もこれも生気を失った虚ろな目をする死者が転がる中、「あ〜…いて」とさほど痛みを感じていない様子で飛段はぼやいた。


「まったく。手当たり次第に殺すな、と言ったろう。火の国の紋が入った腰布を捜せ。そいつが守護忍十二士の証だ」


寺の中でもっとも徳が高く、力も強かった僧侶の遺体を転がし、角都は淡々と腰布を身に着ける目的を捜す。
やがて、火ノ寺を訪れた目的の男────地陸の亡骸を見つけ出した角都は遺体の襟首を持ち上げた。

「こいつは金になる。換金所に持っていく」
「はぁ?」

血で描いた円陣の中で横たわっていた飛段の訝しげな視線を受け、角都は遺体の腰布を見ながら、しれっと説明した。

「こいつの首には闇の相場で三千万両の賞金がかけられているんでな」
「……金儲けの為に坊主を()ると地獄に堕ちるぜ」

飛段の呆れ顔もどこ吹く風といった風情で、角都は抑揚なく、だが確固とした口調で告げた。



「地獄の沙汰も金次第だ────望むところ」



キッパリと答えると、元は寺であった荒れ地を後にしようとする角都に、飛段は寝転がりながら怒鳴った。


「ちょっと待てよ、角都!祈りがまだ終わってないっつーの!」
「…いつもより長くないか」
「うるせぇよ、儀式の邪魔すんな!今は生きてる邪神様への祈りをしてるんだって!!」


生きてる邪神様…────つまりはナルトのことだと察した角都は、眉間に深い皺を寄せた。



「……また不快がられるぞ」
「んなわけねぇって言ってるだろ!んだよ、さっきから!」


胸に突き刺さった棒を引き抜いて、飛段は血の円陣から起き上がった。


「神への冒涜だぞ」


ジロッと鋭く睨みながら、飛段は三刃の大鎌へ手を伸ばす。
ひゅんっと飛んできた鎌の刃を軽く避けて、角都は非難した。


「おい。遺体に傷がついたらどうする。大事な金だぞ」


角都の咎めるような視線に、飛段は「チッ、」と舌打ちした。
殺気を抑え、興が醒めたとばかりに肩を竦めてみせる。


「はいはい。組織の金づくりを任されてる『暁』の財布役は言うことが違うねぇ〜」

飛段の馬鹿にするような物言いに、ピクリと角都は米神に青筋を立てる。
ボロボロの荒れ地と化した寺の廃墟で、カラ…と瓦が崩れる音が響いた。








その崩れた柱の影に身を潜め、二人の様子を窺っていた僧侶はゴクリと生唾を飲み込む。

ちょうど巡警に出ていて寺を不在にしていたのが幸いした。
帰って来た時には見るも無惨な有様だった火ノ寺と、そしてそこかしこに倒れる同じ僧侶として生きてきた者達の遺体
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