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嫌われ者の老婆の所業
第四章
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「今から」
「どうしてそうなるんですか」
「私が飼ったからよ」
「あの、ロンが奇麗になって元気になったから言ってくれません?」
「あの子病気だったのね、治ってよかったわ」
「貴女が全く世話しなかったからじゃないですか」
 留美は次第に感情的になって老婆に言った、だがここで。
 二人は玄関の扉を開いてその外と中で話していたが中つまり家の中からロンが出て来てそうしてだった。
「ワンワンワン!」
「ひっ!」
 ロンが吠えだした、それでだった。
 老婆は怯んだ、留美はそれを見て彼女に強い声で告げた。
「ロンは嫌だって言ってますよ」
「私のところに戻るのが」
「はい、貴女にされたことを覚えていて」
「私が何したっていうのよ」
「自覚がないならいいです」
 それがあるタイプにはとても思えないからだ。
「もう。ですが」
「それでもっていうの」
「何でしたら町内会でお話しましょう」
「犬のことをっていうの」
「そうしましょう」
 こう言ってだ、老婆をまずは帰らせてだった。
 そうして町内会でこのことを話すと皆老婆のことは知っていたので老婆の一方的な主張を聞いてもだった。
 皆彼女の意見は聞かず留美の意見をよしとした、それでだった。
「もうロンには絶対近寄らないってか」
「町内会で一筆書かされたわ」
 老婆の方がというのだ。
「そうなったわ、それで三十万どころかね」
「お金もか」
「払わなくてよくなったわ」
「一円もか」
「そうなったわ」
「それが当然だな」
 夫は妻の話を聞いて言った。
「というかよく引き渡せとか言えたな」
「図々しくて遠慮しないことでも有名な人だから」
「もっと言えば恥知らずだな」
「そうした人でね」
「そんなこと言ってきたんだな」
「平気でね、けれど大人しくて誰にも吠えないロンが」
 今度は彼のことを話した。
「吠えるとかね」
「よっぽどあの人が酷いことをしたんだな」
「どんな生きものもその人が自分にしたことは忘れないわね」
「そうだよな」
「だからロンもね」
 非常に大人しい彼もというのだ。
「吠えたのよ」
「そういうことだな」
「ええ、けれどこれで一件落着よ」
「本当によかったな」
「そうね、じゃあロン今からおやつあげるから」
 妻は話が終わったところで部屋の隅で寝ていた彼に声をかけた。
「いらっしゃい」
「ワンッ」
 ロンはその声に応えてだった。
 二人からおやつを貰って上機嫌でそれを食べた、その後二人は老婆が街を歩いている途中突如脳卒中になり死んだと聞いた、その葬儀は知り合いも親戚も誰も来ず非常に寂しいもので無縁仏に葬られたと聞いた。二人はそれを聞いても何も思わずロンと一緒にいた。


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