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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の1:誰の油断か
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うつもりの奴だ!!」
「食べるだと?」
「人を食うんだよっ、分かれよ!!この前村から分捕った奴等のほとんどを食っちまった!!後残ってるまともな奴はあいつくらいだ!他は食えねぇ!!」
「牢屋はどこに?」
「西の奥の部屋だ!そこにまとめてぶち込んでるぅっ!」

 男はそう言って息を切らす。男の左耳は耳朶辺りまでが裂かれてぶらさがっており、赤い血をどくどくと流していた。

「・・・・・・有益な情報に感謝する、さらばだ」

 言うなりユミルは包丁を一気に滑らせた。鈍らの刃は男の頸の肉を贅沢に掻き切り、男は血を首から噴いた。ユミルが腕を放すと男は棚に頭を打ち付けて、床にどさりと崩れ落ちた。気を失っているが遠からず失血死するであろう。
 おずおずとした様子で顔を覗かせる慧卓に向かってユミルは手招きする。

「さっさと行こう。どうにもこいつら、切羽詰っているようだ」
「直に共食いでもしそうですね」
「もうしているかもしれん。だからさっさと行くぞ」

 包丁を片手にユミルは早々に歩いていく。寝静まっているであろう屋敷の通路を窺う。篝火に頼って見る限り、誰も歩いていないようだ。

「ケイタク、静かに歩けよ?」
「あ、はい・・・・・・そこ、床が抜けそうですよ」
「っ、すまん」

 部屋の前の床が腐りかけているのが見えて、ユミルはそっとそこを回避して歩く。慧卓も後に続いて歩こうとした時、「どんっ!」と、不意に部屋の中から物音がして身が竦んだ。

「っっ!?」

 そして案の定であるのか、足元が狂ってその腐った部分に右足が降ろされてしまい、脛半ばまで床が抜けた。

「っ、馬鹿がっ!?」
「足がっ、抜けないっ・・・!」

 必死に両手で掴み外そうとするも、中々に抜けるものではない。そして運の悪さが一気に重なっていき、扉がぎぃっと開かれようとしていた。

「ちっ!!」

 ユミルは咄嗟に包丁を振り被って投げつける。くるくると回った包丁が、開かれかけた扉の隙間から男の頭部に見事に突き刺さり、男は力を失って床に倒れこむ。隠し様のない大きな音が、静謐のままであった通路に響き渡った。
 ユミルは最早物音を隠さぬ様子で慧卓に近寄った。

「ほらっ、手を貸してやる!!さっさと立て!!」
「ちょ、ちょっと待って!木片がつっかえてーーー」

 一刻の猶予などある筈も無かった。ユミルは力任せに慧卓を引っ張りあげる。ばきっという小気味良い音と共に足が抜けるが、脛の辺りに傷がついてしまったようだ。

「その程度の傷など我慢しろっ!!さっさと走れっ!!」
「は、はいっ・・・!」

 二人はせっせと走っていく。目的の部屋に辿り着くまでそう長くはかからなかった。

「ここだな!」

 勢い任せにユミルは部屋の扉を
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