第三章
[8]前話
「前のこと親戚中に話したらな」
「それならなの」
「ああ、もういい加減親戚皆が怒ってな」
それでというのだ。
「遂にな」
「皆から絶縁されたのね」
「親父も離婚することにしたよ」
このことを決めたというのだ。
「だからな」
「それでなの」
「もううちには来ないさ、それでお袋の実家の方からも縁を切られたから」
「もうお義母さんと会うことはなの」
「ないからな、うちにも絶対に来ないさ」
そうなったというのだ。
「後はどうなるか知ったものか」
「もう二度とうちに来なくて」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「ゴンもな」
「もういじめられないわね」
「ああ、お袋はもう来ないからな」
「よかったわね」
「若し来たら警察呼ぶよ」
夫の言葉は本気だった。
「その時は」
「縁を切ったからよね」
「だからお前もな」
「若しあの人が来たら」
もう義母とは呼んでいなかった、好美も。
「その時はよね」
「通報しろよ、しかしな」
夫はここでこうも言った。
「ゴンいつも吐く時はトイレでだけれどな」
「ええ、私達に遠慮してかね」
「そうしていたのにな」
それがというのだ。
「ああして服の上に吐くなんてな」
「ゴンもいつもいじめられていて怒っていたのかしら」
「そうかもな、お袋は本当に皆から嫌われていたからな」
それでというのだ。
「ああした性格だったからな」
「ゴンもいじめられていたし」
「だからな」
「ゴンもずっと恨んでいたのね」
「それでああしたんだろうな、けれどな」
それでもとだ、夫はさらに言った。
「よかったよ、ああして」
「あの人に対しては」
「本当に生きていても害にしかならないからな」
「そうした人だったからよね」
「ああしてな」
あの様にというのだ。
「縁を切れてな」
「本当によかったわね」
「そのきっかけがゴンだとするとな」
「ゴン様々ね」
「全くだよ、ただ吐くのはこれからはトイレだけにして欲しいな」
「ニャーーーー」
二人の傍にいたゴンはここで一声鳴いた、それはわかっているからという返事の様だった。二人はその鳴き声を聞いて笑顔になった。義母はその後誰からも嫌われ相手にされず余生を過ごした。そして一人で死んだが無縁仏として葬られ葬式もなくその死を喜ぶ者ばかりであった。
誰だって怒る女 完
2020・10・22
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