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誰だって怒る女
第一章

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                誰だって怒る女
 田中一宣と好美夫婦には一つの悩みがあった、それは夫の実母である清美のことだ。夫はよく自分の母のことを妻に話していた。
「本当に昔からなんだよ」
「ああした人なの」
「ああ、理不尽で我儘でヒステリックで自己中心的でな」 
 自分の母だが嫌悪感に満ちた声で言う、黒髪を真ん中で分けた四角い顔で丸眼鏡だ。背は一七三程でがっしりした体格だ。年齢は三十二歳であり仕事は自動車工場の管理担当である。
「自分以外の生きるものは全部大嫌いなんだよ」
「だからゴンも嫌うの」
「本当に自分以外の生きものはなんだよ」
「大嫌いなのね」
「おまけに自分だけ金使ってな」
 このことも言うのだった。
「親戚中からな」
「評判悪いの」
「わかるだろ」
 このことはというのだ。
「お前も」
「それを言うとね」
「そんな人間だからな」 
「いきなり連絡なしでうちに来てあれしろこれしろで」
「ゴンもいじめるんだよ、親父もずっと持て余しているし親戚中からな」 
 それこそというのだ。
「嫌われれるからな」
「そうした人と思ってなのね」
 好美は義母のことを俯いて言った、茶色の髪の毛を肩の長さで切り揃えている、顔はやや長方形で穏やかな目をしている。背は一五六程で均整の取れたスタイルで服装は地味なのは夫と同じだ。職業は地元のスーパーでパートをしている。
「これからもなの」
「ああ、接していくしかないんだよ」
「そうなのね」
「もう親戚全員親父も含めてお袋どうしようかって話も出てるし」
「絶縁なの」
「それも皆真剣に考えているからな」 
 だからだというのだ。
「お前もな、お袋のことはな」
「我慢してなのね」
「やっていってくれ、ただ本当に俺も親父も親戚お袋の実家の筋の人達も含めて皆何十年もお袋の好き勝手とヒステリーと暴言にいい加減我慢出来なくなってるから」
 それでというのだ。
「特に嫌ってる人もいるしな」
「そうした人もいてなの」
「ああ、もう少しかも知れないからな」
 だからだというのだ。
「我慢してくれ」
「わかったわ」
 好美は夫の言葉に頷いた、兎角義母は別居していても自分達の家に連絡なしでいきなり来て好き勝手やってしかも彼女が結婚前から飼っている愛猫ゴン、雑種の雄の黒猫の彼をいじめていた。そしてだった。
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