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ダタッツ剣風 〜業火の勇者と羅刹の鎧〜
第7話 先代勇者の真実
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ナシさんこそ、やり過ぎなんじゃない?」

 ナナシと呼ばれる冒険者の一人に振り向いたリンカは、スゥッと目を細めて彼の両手を見遣る。徒手空拳の達人である彼の拳は、盗賊達の血に塗れていたのだ。

「……手加減はしたさ。ただ奴らが、脆すぎただけのことよ」

 戦いとなれば一切の容赦はない、二人の戦闘狂(バーサーカー)。彼らはやがて、次の獲物を追い求めるように戦場を移していくのだった――。

 ◇

 かつて「帝国勇者」と恐れられ、多くの人々を殺めたダタッツこと、伊達竜正(だてたつまさ)。かつて勇者としてこの世界に召喚され、魔王を倒し世界を救ったランペイザーこと、伊達竜源(だてりゅうげん)
 この世界ではない、遠い国からやってきた「当代」と「先代」の勇者は。敵同士として、顔を合わせている。

「……賢いな、竜正。どこで俺の名を知った」
「勇者の剣の?(はばき)にあなたの名前があった。……ジブンも、日本に居た頃に聞かされたよ。遠い先祖は、戦国時代を生き抜いた剣豪だったと」
「そうか……ふふっ、奇妙な縁があったもんだ。巡り巡って俺の子孫までもが、この世界に飛ばされて来ちまうとはな」
「……そんなことはいい。どうしてだ。どうして勇者と称えられてきたあなたが、こんなことを!」

 だが、ダタッツは先祖を前にしていながら敬うどころか、敵対する姿勢を露わにしている。そんな彼の人となりを、鎧を通じて(・・・・・)見つめてきたランペイザーは、たじろぐ様子もなく薄ら笑いを浮かべていた。

「お前ならそう言うと思ってたぜ、竜正。……さぞかし、温い時代を生きてきたんだろうよ」
「……ジブンのことは、どう言われたっていい。ジブンは帝国勇者と揶揄されるだけのことをしてきた。でもあなたは……少なくともあなただけは、真の勇者だと誰もが信じているのに!」
「それが温いって話をしてんだよ。俺が生まれ育った戦国の世も、この世界も大して変わりゃあしなかった。敗北が許されない、勝者だけのためにある世界。妻子と引き離されこの世界に連れ込まれた以上、俺のやることは一つしかなかった。それを悔いたことは、今まで一度もない。死んでからもな」

 ――数百年前、戦国時代の日本から召喚された伊達竜源には、妻子がいた。元の世界に帰る方法を言葉巧みに隠されたまま、魔王討伐を強いられ戦いに臨むしかなかった竜源は、家族を想いながら己の命を擦り減らす日々を送っていた。
 それは魔王を倒し、残党狩りを始める頃に差し掛かっても続き。憔悴する中で妻に似た女性を抱き、苦しみを紛れさせる夜もあった。そんな毎日は、文字通り死ぬ(・・)まで続いたのである。
 その女性と紡いだ血統が、やがて誕生する王国の英雄・アイラックスへと繋がっていくことなど知る由もなく。

 神が遣わし
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