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Fate/WizarDragonknight
木綿季
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 地下深く。
 そんなフロアがあったことなど、彼女と知り合わなければ知ることもなかっただろう。
 無数の無菌室のための設備を通過し、可奈美が訪れたのは厳重な病室だった。
 外界とは、白い壁で拒絶された部屋。繋がりは、固く閉ざされた扉と、可奈美の前のガラスのみだった。
 部屋には大きな装置が設置されており、その手前には、壁と同じくらい白いベッドがあった。無数の装置のみがあったようにも見えるが、その下には小さな肌色……人の姿があった。

木綿季(ユウキ)ちゃん?」

 ガラス越しに、可奈美は声をかけた。木綿季(ユウキ)という声に、装置の中の人影は口を動かした。

『可奈美さん?』

 その声は、肉声ではない。可奈美のすぐ近くにある装置より聞こえてきた。

「そうだよ。可奈美だよ」
『……! 本当に来てくれた!』

 装置から発せられる、電子音声。だがそこには、少なからずの喜びが込められていた。

「あ、この前言ってた竹刀あるよ。今日は動けそう?」
『ううん……体が、もう思うように動かないんだ』
「そうなんだ……じゃあ、お話だけ?」
『うん。ごめんね。わざわざ来てくれたのに』
「気にしないでいいから」

 そうは言いながら、可奈美は険しい顔で病人の体を見通す。肌色の部分よりも覆いかぶさっている部分の方が多く、それが彼女__木綿季の病状を物語っていた。

「木綿季ちゃん、体どうなの?」
『うん。やっぱり、症状は変わってないよ。でも、そこは気にしないで』

 気にする。その言葉を、可奈美はぐっと飲みこんだ。彼女の次の発言が、『それよりもまた剣術教えて』だったからだ。
「うん。それじゃあ、今日は……」

 可奈美は、簡単に選んだ流派の剣を披露していく。狭い病室の中、可能な限りの動きで、木綿季はそれに対して歓喜の声を上げている。

『ねえ。可奈美さんには、ほかの剣術仲間とかはいないの?』
「たくさんいるよ。見滝原には来ていないけどね。みんな全国に散らばっているから、今はなかなか会えないんだ」
『そうなんだ……』
「あと、これは鹿島(かしま)神當流(しんとうりゅう)の車の構え、清眼の構え、引の構えだよ」

 可奈美は、友の姿を脳裏に思い浮かべながら、その構えをしてみせた。
 目を輝かせたような声を上げながら、木綿季は呟いた。

『本当、ボク可奈美さんに会えてよかったよ』
「え? それ言うの、ちょっと早すぎない?」
『だってボク、この体だからね。言いたいことは早めに言っておきたいんだ』
「早めにって……そんな、余命いくばくもないみたいな……」
『あれ? 前言ってなかったっけ?』

 すっとぼけたような声音で、木綿季は言った。

『ボク、あと二週間なんだって』


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