木綿季
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チノの見舞いに来た時、小さなドローンが可奈美を刀使だと見抜いた。そのまま、付属していたマイクを通じて、この病室に導かれたのだ。
そのドローンは、木綿季の目だった。外の世界を視覚的に伝えるためのもので、病院の敷地内のみの情報を、木綿季に届けるためのものだったのだ。
木綿季は、剣に憧れていた。刀使として活躍している可奈美に尊敬を抱き、そのまま剣について色々話していた。可奈美のことは、以前テレビで受けたインタビューのことで知っていた。
まだ二回目にしての余命宣告に、可奈美は言葉を失った。
「二週間って……どういうこと?」
『あと二週間で、ボクの命がなくなるってこと。末期らしいんだ』
言葉では、可奈美は「そんな……」と口にしていた。しかし、その内情は驚くほどに落ち着いていた。
それを見抜いたのだろうか。木綿季はこう返した。
『驚かないんだね』
「……最初に出会ったときから、そんな気はしていたよ」
可奈美は剣の動きを続ける。何度も見てきた、大切な人の姿を自分に重ねながら、それ以外の機能はすべて木綿季へ注がれていた。
「改めて言われると、やっぱりショックだけどね」
『ごめんね』
「謝らなくてもいいよ」
可奈美は首を振る。
「私なんかより、木綿季ちゃんが、一番苦しいだろうし。……ねえ」
『ん?』
「それじゃあ……木綿季ちゃんは、もう外に出られないの?」
『難しいかな。でも……』
「でも?」
『ボク、また外に出たいなあ……この体じゃあ……』
可奈美の耳に届くのは、あくまで木綿季の思念を電子化して再生した音声。だが、そこには彼女の嘆きが十二分に再現されていた。
『ボク、一回だけでいいから、剣を手に持ってみたい。振ってみたい。そんなこと、叶わないのかな……?』
可奈美は、竹刀を振る手を下した。しばらく木綿季を見つめてから、傍らに置かれたギターケースに視線を流した。
竹刀をしまい、相棒であるピンクの鞘がついた刀、千鳥を取り出す。
数秒見つめてから、またしまいなおした可奈美は、ガラスに張り付いた。
「ねえ!」
『うわっ! ビックリした……どうしたの?』
「私と一緒に、立ち合い! ……じゃなかった、剣の練習してみない?」
『え?』
「見せてあげるって約束したけど、それだけじゃ足りないよ! やっぱり剣は、手にもってやらないと!」
『でも……』
「だから病気なんてやっつけて! 私だって、必要なら毎日来るよ! なんでも見せるから! だから、早く良くなって、私と剣の修行しよう!」
『ボク、本当に……?』
「うん! それに、もしかしたら木綿季ちゃんだって刀使になれるかもしれない! そうすれば、私と試合だってできるよ!」
『可奈美さんと試合はちょっ
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