◆外伝・弐◆ 〜麗羽の一日〜
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しまう。
ある意味、最も残酷であるかも知れない存在ではあった。
彼らはただ、遊び相手として元皓を望んでいるだけであり、麗羽を責めている訳ではない。
……にも関わらず、麗羽は茫然自失となっていた。
猪々子も、そんな彼女に声をかける言葉がないようで、ただ狼狽えるばかり。
「また今度ね。その時は、遊んであげるから」
「本当? 約束だよ?」
「わかったよ。ほら、向こうで遊んで来なさい」
「はーい」
そして、再び元気に賭けだして行った。
「……おい、田豊」
「どうかしましたか、文醜さん」
「どうかしましたか、じゃねぇ!」
猪々子は、元皓の胸ぐらを掴む。
「てめぇ、態と姫の悪口を聞かせるようなところばかり連れてきてるだろ!」
「そう、見えますか?」
元皓は、顔色一つ変えずに言う。
「ああ! お前が歳三アニキと姫を比べて、アニキを買うのは仕方ないさ。けどな、姫をいたぶるつもりなら、あたいは承知しないぜ!」
「お止めなさい、猪々子さん」
「姫! 姫も何故言われっぱなしで黙ってるんですか!」
「……いいから、その手をお放しなさい」
重ねて言われ、猪々子は元皓を放した。
「言っておきますが。このギョウで、袁紹様を褒めそやすような場所はありません」
「おい、まだ言うか!」
「猪々子さん!」
いきり立つ猪々子だが、しぶしぶと引き下がる。
「何度でも言いますが、今の袁紹様は、このギョウ、いいえ、冀州の庶人誰一人として信頼を得ていないのですよ? 僕はただ、その現実を知って欲しかっただけです」
「…………」
「それなのに、ご自身が歳三様に憧れるあまりに、あちこちに手を出そうとしていますよね? そんな半端な覚悟で、本当に州牧が務まるとお思いですか?」
「……それで、先ほど、あのような事を」
「はい。ご無礼は承知の上です。ですが、今の袁紹様は、剣の鍛錬などなさらずとも結構。それよりも、まずはこのギョウの民、彼らの信頼を得る事が最優先です。その為には、政務に専念して戴きたいのです」
麗羽は、小さく頭を振る。
「……仰る通りですわね。わたくし、焦っていましたの」
「焦っても何も結果は出ません。悠長に構えるような時勢ではありませんが、いきなり歳三様のようになれ、とは僕は言いません。いえ、嵐もきっとそう言うでしょう」
「そう、ですわね。……わかりましたわ、戻って政務の続きをしましょう」
「はい。あと、文醜さんも一緒に。少しは、政務に関わって戴かないといけませんからね」
「いいっ? あ、あたいも?」
元皓は涼しい顔で、
「当然でしょう? ただでさえ人手不足なのです。読み書きが出来るだけでも、立派に文官は務まりますから」
「い、いやぁ、あたいはほら、剣を振り回すしか能がないし」
「駄目です。宜しいですね
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ