◆外伝・弐◆ 〜麗羽の一日〜
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なく人々が行き交い、あちこちから物売りの声が上がる。
「相変わらずの活気ですわね」
「当然です。歳三様の元、みんなで努力した成果ですから」
そう言いながら、元皓は露天商に声をかける。
「景気はどうですか?」
「おや、田豊さん。お陰様で、商売繁盛でさぁ」
笑顔の商店主だが、背後の麗羽らに気がつくと、途端に顔を曇らせる。
「……ただ、この景気もいつまで続くのか、そうは思いますけどね」
「何か不安でも?」
「いや、田豊さんや沮授さん達がおられる以上、大丈夫……って言いたいところなんですがね。実は、商売仲間がエン州に移る、って言い出してるんで」
「エン州……曹操様のところですか」
「あっちも、此所に負けず劣らず賑わってるそうですし。今度の州牧様は、刺史からそのまま務めるんでしょう? おっと、お客が来たようで。失礼しますぜ」
元皓は、頭を振りながら、麗羽達のところに戻った。
「彼らは、店舗を構えずに商いをする人達です。その地に根付く事はありません、景気や治安を見て、場所をその都度変えているんです」
「……華琳さんのところに行く人がいる、そう仰ってましたわね」
「はい。陳留を中心に、エン州は安定していますからね。曹操様の為政もかなり評判がいいですし」
「なぁ、田豊」
「何ですか、文醜さん」
猪々子は頭をかきながら、
「屋台がいなくなるって事はさ。この裏通りにある、食い物の屋台も……って事か」
「可能性はあるでしょうね。特に、飲食店は人が多くなければ儲かりませんし、屋台は薄利多売が基本ですからね」
「うへ〜、そいつは困るって。この街の屋台、美味い店が多いのにさぁ」
「……彼らを縛る事は出来ませんし、出来たとしてもそれをやるのは為政者として失格です。寧ろ、彼らに見捨てられるような自分を省みるべきでしょうね」
麗羽は、ただ押し黙っている。
「……次に行きましょうか」
振り返る事なく、元皓は歩き出す。
住宅が並ぶ一角。
空き地で、子供達が元気よく走り回っている。
「あ、田豊さまだー」
「田豊さま、今日は遊んでくれるの?」
あっという間に、子供に囲まれる元皓。
「ごめんね、今日は州牧様のお供なんだよ」
「え〜? そんなのいいから遊ぼうよ〜」
「そうだよ。州牧って、あのお姉ちゃんでしょう?」
と、子供の一人が、無遠慮に麗羽を指さす。
「お母さんが言ってたよ、暮らしが苦しくなるから大変だって」
「うんうん、わたしのお父さんも、たくさん税を取られるかも知れないって頭抱えていた」
「僕なんて、友達が引っ越しちゃったよ。州牧さまのせいで生活出来ないって」
子供に取っては、州牧などという存在がどういうものか、理解出来る訳がない。
ただ、家族や友人が内々に語った事も、遠慮なしに口にして
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