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至誠一貫・閑話&番外編&キャラ紹介
◆外伝・弐◆ 〜麗羽の一日〜
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ど……わたくしは、別に遊びに行きたいと言う訳ではありませんわ」
「無論です。仮に冗談でもそんな事を言い出すのなら、僕は今からでも歳三様を追いかけますよ」
 真顔で言う元皓。
「……実は、猪々子さんに剣の稽古をつけていただこうと思いましたの」
「剣の?」
「そうですわ。わたくしは、これでも軍人として振る舞っていますけど……。今のままでは、まともに戦う事も適いませんもの」
「で、姫と約束した刻限になったんで迎えに来たって訳なんだけどさ」
「事情はわかりましたけど……。袁紹様、今がどういう時期なのか、おわかりですよね?」
 麗羽は、黙って頷く。
「ただでさえ、歳三様を慕う庶人は今でも圧倒的に多いんですよ。一方、袁紹様は渤海郡での失政がここ、ギョウでも広まっているんです、十二分にね」
「……はい」
「そんな評判を覆さない限り、袁紹様が州牧としての役目を果たすのは無理です。いくら嵐や僕、官吏の皆さんが努力したとしても、です」
 淡々と語る元皓。
 だが、その眼は冷たく、麗羽を見据えていた。
 彼は元来、酷薄な性格ではない。
 寧ろ、律儀であり情にも厚い。
 ……但し、庶人の暮らしを重んじる彼に取って、為政者への妥協はあり得ない。
 そんな彼に取って、歳三はまさに理想の上司であった。
 確かに武人であり、政治家として人の上に立つ事を望む方ではない。
 それでも、政務を怠る事はなく、麾下の人間を使いこなすだけの度量がある。
 そして何より、自身は決して豪奢な生活を送る事もなく、庶人の事を大切にする。
 短い間ではあったが、元皓に取ってはやり甲斐に満ち、毎日が充実していた。
 その結果として、魏郡は腐敗と度重なる災害や黄巾党などの賊横行による疲弊から立ち直り、奇跡とも言うべき復興にもつながった事は明白。
 だが、その歳三は既に交州へと去り、後任は麗羽。
 元皓にしてみれば、渤海郡時代の悪印象しかない人物である。
 歳三から諭され、麗羽と直接語り合った末に、元皓は残る道を選んだ。
 が、それは即ち麗羽を信頼した、という事ではない。
「田豊さん。わたくしも、その事を忘れた訳ではありませんわ。政務も、到底お師様には及びませんもの」
「それならば、何故その為の努力を途中で投げ出すような真似をなさるのですか?」
「…………」
 ふう、と元皓は息を吐く。
「わかりました。鍛錬は認められませんけど、ちょっと外出しましょうか」
「外出?」
 麗羽が首を傾げる。
「ええ。気分転換になるかどうかはわかりませんけど」
「いいんですの?」
「……今のまま続けても効率は上がりませんよ。文醜さんも一緒に来ていただけますか、警護も必要ですので」
「あたいも?……まぁ、姫が出かけるなら」

 そして、三人は城下町へ。
 せわし
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