◆外伝・弐◆ 〜麗羽の一日〜
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処理すれば良い訳ではなく、中身を確かめ、精査する必要がある。
一度落款をした書簡は、当然それを許した者に責任が発生するからだ。
中には公費の私的流用を目論んだり、不正行為の温床となるものが混じっている場合もあり得る。
……とは言え、その全てを一度に処理出来る筈もなく。
元皓を呆れさせたり嘆息させたりしつつも、その一部をどうにか片付けた麗羽。
「疲れましたわ……」
そう独りごちる麗羽。
以前の彼女ならば、こんな真似は間違ってもしなかったであろう。
常に優雅に、華麗に。
とにかく、己を如何に美しく飾るか、そればかりに腐心していた。
だから、自慢の金髪や衣装には費えを惜しまず、彼女に傅く人員も多く置かれていた。
……が、一切の虚栄心を捨て去った麗羽に取って、全ては意味のないもの。
そう判断した麗羽は、今唯一人、部屋にいるという次第だった。
「お師様……」
彼女が懐から取り出した、一枚の絵。
洛陽の絵師に描かせた、謂わばブロマイドと言うべきものだ。
麗羽はそれを、ずっと肌身離さず持ち歩いている。
「わたくし、負けませんわ。ですから……守って下さいませ、お師様」
そっと、絵を胸に抱き、彼女は眼を閉じた。
翌朝。
「……お、おはようございます、袁紹様」
出仕してきた元皓は、軽く驚いたようだ。
真面目な彼は、指定された刻限よりも前に出仕してくるのが常である。
一方、嵐はその点、割と杜撰だったりするのだが。
「あら、田豊さん。早いですわね」
……その彼よりも早く、麗羽は執務室に入っていた。
それも、ただ待っていた訳ではなく、書簡を手にしながら、である。
「あ、わたくしでわかる範囲でもせめて、と思いましたの」
「そ、そうですか……」
「……もしや、わたくしは余計な事を……?」
不安げに言う麗羽に、元皓は慌てて手を振る。
「い、いいえ! とんでもありません」
「良かったですわ。では田豊さん、本日も宜しくお願い致しますわ」
「は、はい。僕の方こそ」
日頃冷静な元皓だが、どこか取り乱したまま、書簡を手にした。
「姫〜!」
二刻が過ぎた頃、猪々子が執務室に入ってきた。
机の上には、堆く積まれた書簡の山。
その向こうから、麗羽と元皓が顔を覗かせる。
「ありゃ、お邪魔でしたか?」
「いえ、大丈夫ですわ。田豊さん、一刻ほど外しても宜しいかしら?」
「何をなさるおつもりか次第ですね。文醜さん、袁紹様は見ての通り、執務中ですが」
「あ〜、それはわかってるんだけどさ。姫から頼まれた事で呼びに来た訳で」
「袁紹様から?……どういう事ですか?」
「姫、どうします?」
「……お話ししますわ、わたくしから。田豊さん、勘違いしないでいただきたいのですけれ
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