ターン34 退路なきエンターテイメント
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さいました、まずはこの私、鳥居浄瑠より心よりお礼申し上げます。赤い髪したたった一人のお客様?決して退屈はさせないことを、ここに誓約いたしましょう』」
暗い階層にただ一点、差し込む丸い光源の下で、鳥居が大仰に一礼してみせる。それは、彼の最も得意とする演劇とデュエルを組み合わせたエンタメスタイルの立ち上がりに他ならない。当然それを楽しむつもりなど毛頭ない糸巻の視線はどこまでも怒りに満ちて冷たいが、鳥居にとて本人がそう口にしたように既に引けないところまで来ており、彼なりの覚悟をもってこの場に臨んでいる。
だからこそ、あえて一度は捨てたこのスタイルを再び選んだのだ。なにせ鳥居は『赤髪の夜叉』、糸巻の理不尽な強さをよく知っている。それでもあえて怒りに燃える彼女に対し戦いを挑むとしたら、それはこの彼の信じるエンタメデュエルをもってしかありえない。
「『さて。私とあなた、たったふたりの大舞台には、いささか殺風景な空間だと思いませんか?それではお目にかけましょう、よりふさわしき舞台に生の息吹が宿るさまを!フィールド魔法、魔界劇場「ファンタスティックシアター」!』」
これ見よがしに掲げた1枚のカードをフィールドゾーンに置いた瞬間、突如としてあたり一面に光が弾けた。あまりの眩しさに思わず目をつむる糸巻の耳に、やたらと明るい楽しげな音楽が聞こえ始める。いまだ暗闇に慣れた目にはまぶた越しですら強すぎる光に顔をしかめつつも思い切って目を開けた糸巻の目に飛び込んできたのは、コウモリ型の風船が乱れ飛び色とりどりのライトが照らす劇場の姿だった。
左右を見れば、彼女の周囲には無数の客席らしき椅子が。そして見上げれば、その先の壇上で満面の笑みをたたえながら両手を広げたポーズをとる鳥居の姿。まさしくそこは、鳥居を主役としたワンマンショーの舞台だった。
「『ファンタスティックシアターは1ターンに1度手札で出番を待つ団員の紹介、及び台本1冊の予告を行うことで、更なる追加演目の魔界台本をデッキから手札に加えます。私はこの通り魔界劇団・サッシー・ルーキー、及び魔界台本「火竜の住処」の存在を告知することで魔界台本「ロマンティック・テラー」の公開予告を行います』」
手札2枚を明かすことで行われるサーチ。一見すると得た1枚よりも失った情報アドバンテージの方が大きいようにも感じられるが、もとより手札消費の荒くなりがちな、つまり手札をそれだけ使うことができるペンデュラムテーマにとってはさほど痛手でもない。
鳥居があの2枚を躊躇なく明かしたのもロマンティック・テラーのカードが欲しかったというよりも、見せた2枚をどうせこのターン中に使ってしまえる準備ができているからだろう、糸巻はそう推察した。
「『さあ、いよいよ舞台も整いました。万雷の拍手をもって我らが劇座の団員
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