病院再び
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「チー君?」と言って咎め始める
「どこ行ってたの? クトリちゃんが心配していたよ!」
「えへへ……」
「まったく……クトリ!」
「はーい!」
部屋の奥からクトリの声がした。彼女の姿が現れる前に、その空のように蒼い髪が奥の別部屋から垣間見える。
「ちょっと待ってください! う、うわっ!」
クトリの悲鳴が聞こえた。
保母さんたちはクトリの助けに向かおうとするが、子供たちが二人を引っ張りまわし、とても動けそうにない。
「あの、自分見に行きましょうか?」
ハルトの一声に、保母さんたちは警戒を表す。だが、チー君がいることで、ある程度気を許したのだろう。「お願いします」と手短に答えて、二人は子供たちを落ち着かせようとしていた。
ハルトは「お邪魔します」と一声おいて、中に入る。病院特有の薬品の臭いが全くしないこの部屋。クトリの声がしたのは、奥の洗面室からだった。
「クトリ……ちゃん……」
洗面室のそのあまりの惨状に、ハルトは言葉を失った。
誇張表現なしの洗濯物の山。色とりどりの服や、キャラクターがプリントされたものの中に、ひと際目立つ美しい蒼。小さな質量たちによって押しつぶされたクトリが、そこで目を回していた。
「う〜ん……」
「これはひどいな……」
ハルトは思わずそう呟いた。このまま放っておくのも面白そうだと思いながら、ペチペチとクトリの頬を叩く。
「クトリちゃん。大丈夫?」
数度のたたきにより、クトリはようやく目を覚ました。
「あれ? ……ハルトさん?」
ハルトの存在を認識したクトリは、洗濯物の山から脱出して、キョロキョロと状況を
「は……はわはわはわはわ……」
クトリは金魚のように口をパクパクさせながら、言葉を探している。
「えっと……これは……」
「別に恥ずかしがることでもないと思うよ」
「そ、それより……どうしてハルトさんがここに?」
「自分で子供たちに手品見せてほしいって言ったの、忘れたの?」
「あ……」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした後、クトリはぱあっと顔を輝かせた。
「見せてくれるの?」
「これが終わったらね」
ハルトは洗濯物の山を見渡しながら言った。
今、自分がファントムだったらあっさり目的達成できそう。それくらい、クトリは絶望した顔を浮かべた。
「やっと終わった……」
洗濯物のみならず、掃除昼食その他家事全般を手伝うことになったハルト。子供たちの近くで大の字になり、大きく息を吐いた。
「手伝ってくれてありがとう」
その隣で、クトリがにっこりと喜んでいた。
「いつもはお休みの日でも、もう少し時間かかるんだけど、おかげ様で早く終わっちゃった」
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