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Fate/WizarDragonknight
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「うーん……あやしくない!」

 ジロジロと見まわしたチー君は、そのまま友奈にコインを回す。右手だけチー君から離してもらった友奈は、コインの裏表を確認する。

「うん。ただのコインだね」

 友奈から返してもらったハルトは、「何もなかったよね?」と再度確認する。
 二人が頷いたのを確認したハルトは、

「それじゃあ、よ〜く見ててよ。ほいっ!」

 親指が弾いたコインが宙へ飛ぶ。二人がそれをしっかりと目で追っている。
 そしてハルトは、二人の目前で、両手で交差するようにして掴んだ。

「さあ? どっちの手で取ったでしょう?」
「ムムム……」

 チー君は、難しい顔でハルトの両手を見比べている。何度も両手を見比べては、「うんうん」と唸っている。

「ちなみに友奈ちゃんは分かる?」
「え?」

 友奈は口をポカンと開けていた。

「いや、ハルトさん結構これ速いよ? 分かんないよ!」
「じゃ、降参ってことだね? 可奈美ちゃんは?」
「右」

 可奈美はノータイムで答えた。
 そのあまりの素早さに、ハルトは目を白黒させた。

「どうして?」
「どうしてって……ハルトさんがコイン掴むの見えたから」
「見えるものなの?」
刀使(とじ)なら多分みんな見えると思うよ」
「マジで?」
「うん」

 彼女の凄まじい動体視力に慄きながら、ハルトは右手を開く。可奈美の見切り通り、その中にはコインがあった。

「可奈美ちゃんすごい!」
「お姉ちゃんすごい!」
「えへへ……」

 チー君の声に、可奈美は嬉しそうにほほ笑む。
 だが。

「でも残念。正解はこれ」

 ハルトは、左手も開いた。
 するとなぜか、そちらからもコインが顔を見せた。

「嘘?」
「何で?」

 友奈とチー君が驚いている。期待通りの反応に満足しながら、

「どうやったの? 間違いなく右手だったのに」
「それは教えられないなあ」

 チー君よりも、友奈の方が種明かしに必死になっていた。

「すごいすごい! ねえ、お兄ちゃん! もう一個! もう一個見せて!」
「うーん、そうだな……じゃあ、お次は……」

 ハルトが次を出そうとしたその時。

 大地が震えた。

「うわっ!」

 思わぬ衝撃に、ハルトはバランスを崩す。それにより、次の小道具であるビー玉が地面に散らばった。

「あっ!」

 ビー玉を拾おうと、止める間もなくチー君が走り出した。彼を止めようとするハルトと可奈美、友奈だが、その前に無数の人々が雪崩れ込む。

「逃げろ!」
「助けてくれ!」

 一目散に公園を横切る人々に遮られ、チー君の姿は見えなくなってしまった。
 逃げ惑う人々。
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