観客が増えると嬉しい
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る。
「何? 何? ……友奈ちゃん?」
「やっほー! 可奈美ちゃん!」
犯人は、赤いポニーテールの少女、結城友奈だった。
彼女は眩しい笑顔で手を振る。
「何してるの?」
「何してるって……」
可奈美はぜえ、ぜえ、と肩を鳴らしている。
「ココアちゃんたちが帰ってきたから、休憩兼ねて散歩してるだけだけど……」
可奈美の言葉がいつになく忙しなく聞こえた。
その中で、友奈はハルトの手にある無数の輪ゴムたちを見下ろした。
「何やってたの?」
「ああ、これ? 大道芸」
「大道芸?」
「お? 友奈ちゃんも見る?」
思わぬ観客の増員に、ハルトは喜ぶ。鞄からトランプを取り出し、
「じゃあ、今度はこれを使おうか」
「トランプ?」
「そ。ただのトランプマジックじゃないよ。これを……ん?」
ハルトが見れば、目をキラキラさせている少年がいた。小学校低学年くらいの年齢の少年。
「この前のやつやって!」
この前のやつ。どこかで芸を見せたことがあっただろうか。
リピート客の出現に、ハルトは少し笑みを浮かべる。
少年はピョンピョンと跳ねなあら、
「ねえねえ! もう一回、この前のやつやってよ!」
「この前の……もしかして……君、……」
「うん! チー君だよ!」
ああ、と思わずハルトは頷いた。
だが、ハルトの脳内のチー君……病院で迷子になっていた少年の姿とは、少し姿が重ならなかった。
そうしている間に、チー君の興味は友奈へ移った。
「……」
じっと友奈を見つめるチー君。友奈は彼と目線を合わせるようにしゃがんだ。
「どうしたの?」
「あれ? 友奈ちゃんもう懐かれちゃった?」
竹刀を拾いながら、可奈美が言った。その通りと言わんばかりに、チー君は友奈の腕を掴んだ。
「へへ……」
チー君は何も言わずに、手に頬ずりし始める。
これは未成年だからこそ許されることだなと思いながら、ハルトは頭を撫でられるチー君を見ている。
「チー君っていうの?」
「うん!」
チー君は友奈の腕にしがみつきながら、友奈をハルトの隣に座らせる。彼女の膝の上でちょこんと座ったチー君は、ハルトに目線で続きをねだる。
「可奈美ちゃんは、よくハルトさんの大道芸見てるの?」
「時々ね。同じ下宿先だから。でも、とってもびっくりするよ」
「そうなんだ! 楽しみ!」
チー君と同じくらいはしゃぎだす友奈。
彼女に「はいはい」と、応える。
「じゃあ……チー君もいるし、トランプよりわかりやすいもの……まずは、これかな」
ハルトは金色の玩具のコインを取り出す。どこにでもあるプラスチック製のそれを、タネの確認のためにチー君
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