蒼井晶であきらっきー
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いよいよその日がやってきた。
ハルトが見守る中、チノが緊張したように顔を固めていた。
「今日が……モデルさんがやってくる日……」
いつものようにアンゴラウサギ、ティッピーを頭に乗せながら、チノはずっと動かない。
「チノちゃん、大丈夫?」
そう気遣うココア。彼女が数回チノの肩を叩いているが、チノの緊張は解れた様子はなかった。
「チノちゃん、ガチガチだな」
「今日のことずっとワクワクしていたもんね」
そんな二人を、ハルトはカウンターで皿を洗いながら眺めていた。可奈美もカウンター席で水を飲みながらくつろいでいる。
「タカヒロさんも、今日のことはチノちゃんに一任するって、随分大きく出たね」
「それだけ信用しているってことでしょ。でも、大丈夫かな」
ハルトの心配通り、チノは「練習」と言いながら、座席に座ったココアへ水を置こうとするも、手を滑らせ、ココアの頭から水をぶっかけてしまった。
「あ……」
「え……あはは……大丈夫大丈夫!」
ガクガクと震えるチノに、ココアが微笑みかけた。
「落ち着いてチノちゃん。ほら、もう一回」
「は、はい……」
チノはとてとてとカウンターに戻り、水を入れる。だが、彼女の足がとても固く、見ていて不安になった。
「チノちゃん。少しは落ち着いたら?」
「落ち着いていられません!」
ハルトの言葉に、チノがかみつく。
「今日のアイドルさんの宣伝次第で、今後のラビットハウスの行く末が変わってくるんです! 今日は、何としてもいいところを見せないと!」
「うーん……チノちゃん。素人目線だけど、ラビットハウスのいいところって何?」
「それは……風靡のある、渋いお店であることです」
チノがふんずと言い張った。
ハルトはそれに頷くも、
「でも、他にもあるんじゃない?」
「そうですか?」
「そう。例えば、暖かくて親しみやすいとかさ」
「親しみやすいですか?」
チノが肩をすぼめた。
その問いに答える前に、丁度ドアの呼び鈴が鳴った。
アイドルが来た。そう思って、チノは気合をいれて「いらっしゃいませ」と言う。
「こんにちは!」
随分元気な声のアイドルだな、とハルトが入り口を見れば、
「えへへ……来ちゃった」
アイドルなどという身分ではない、普通の少女がいた。
赤いポニーテールの、活発な顔つきの少女。一昨日真司から心配していると聞かされた、結城友奈がそこにいた。
「ラビットハウスって名前は知ってたんだけど、知らないところだから迷っちゃって。ここが可奈美ちゃんが働いているところなんだよね」
「う、うん……友奈ちゃん……で、いいんだよね?」
「はい!
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