暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第52話:通じ合う2人
[6/8]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
スの心を落ち着かせる事が出来た。おかげでクリスは、とても落ち着いた気持ちで透の演奏を聴きその中に込められた彼の想いを受け取る事が出来た。
「透……少しも悲しんでない」
クリスが感じた通り、透は微塵も悲しんではいなかった。歌が歌えなくなった事、言葉で想いを伝える事が出来なくなったことは確かに惜しい。しかし、歌が無くなっても彼にはヴァイオリンがあるし、彼の想いを言葉も介さず受け止めてくれるクリスが居る。
たったそれだけの事だが、それで彼は十分に救われていた。
だからこそ、彼は自分の事でクリスに苦しんで欲しくはなかった。自分の事を、彼女の歌の枷にして欲しくはなかった。
クリスは透の優しい演奏から、その想いを確かに感じ取っていた。
「でも、あたしを元気付けようとした所為で、透は歌えなくなったんだぞ? なら、あたしが透の代わりに歌うのが……」
それは違う、違うのだ。透が望むクリスの歌は『クリスが心から楽しむ歌』であって、『歌えなくなった自分の代わりの贖罪の歌』ではないのである。
透が先程悲しんだのはそれが理由だ。彼はクリスが透の夢を否定したようなことを口にしたから悲しんだのではない。クリスが透も愛した彼女の両親への想いを忘れてしまったようなことを言った事が悲しかったのだ。
だからこそ、クリスには想いを理解してほしかった。そして思い出してほしかった。自分は少しも辛くはない事と、彼女の両親への愛を。
「透……あたしは……」
それでもまだ一歩踏み出す事が出来ないのか、愁いを帯びた顔をするクリス。どうやら演奏だけではここまでが限界らしい。自分の演奏の力の及ばなさに透は歯噛みする。
すると透は今度は演奏を止め、クリスに近付くと彼女の頬を両手で包み目を瞑って額を付けた。演奏と言う小手先の手段に頼ることを止め、裸の想いを肌で彼女にぶつける事を選んだのだ。
普通に考えれば、こんな事で想いなど伝わる訳がない。傍から見れば何を血迷った事をと思うだろう。だが透は信じていた。自分のクリスへの留まる事の無い愛を、そしてクリスが自分を愛してくれている事を。
互いに吐息がかかる距離に顔を近付けられ、思わず赤面するクリス。
その瞬間、クリスは確かに聞いた。
クリス……大好き……
「あ、え…………」
耳で聞いた訳ではない。だが心は確かに感じ取った。透からの温かな愛と、自分への明確な好意。自分への愛の告白を、確かに感じたのだ。
クリスの様子から想いが伝わった事を察し、目を開けて顔を離そうとする透。
だがクリスは離れそうになる彼に抱き着き、ギュッと抱き締めた。溢れ出る想いが力を与えているかのようだ。
「うん……うん! あたしも、透の事
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ