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若者は旅立って
第五章
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 良晴は何とか生き残った。彼は街を出て空港に辿り着くことができた。しかしここで。
 ブリーフ13は空港の入り口で立ち止まった。そのうえで彼にこう言った。
「俺はここでお別れだ」
「あれっ、日本には戻らないのかよ」
「次の仕事がある」
 それで空港には入らないというのだ。
「だからここでだ」
「お別れか」
「空港の中に入り日本行きの飛行機に乗れ」
「もうチケットはあるぜ」
「ならそれで行け」
 そうして帰れというのだ。
「いいな。それではだ」
「ああ、色々あったけれどな」
 それこそがらがらと特等を当ててから色々とあった。ここに来るまでがそもそも大変だった。多くのことがあり過ぎたと言ってもいい。
 しかしそれも終わろうとしている。良晴は感慨を込めてこう言った。
「それも終わりだな」
「御前は日本に帰れば就職だな」
「それにお見合いだよ」
「いいことだ。幸せになれ」
 ブリーフ13は無表情のまま答える。
「それではな」
「そうなるな。それであんたは」
「俺はこのままだ」
「このまま?」
「この姿のまま生きていく」
 裸にネクタイ、ブリーフでだというのだ。
「これからもな」
「そうか。じゃあ捕まるなよ」
「安心しろ。数え切れないだけ捕まっている」
 猥褻物陳列罪でだ。彼は仕事では捕まったことはないがそちらの罪では常に捕まってきているというのだ。
「警察は俺を見ると絶対に来る」
「だろうな。あからさまだからな」
 実際に良晴も見てすぐに変態だと確信してた。
「それも当然だな」
「世の中無理解な者が多くて困る」
「無理解じゃないだろ。まあとにかくな」
「うむ、機会があればだ」
 やはりにこりとしないまま言うブリーフ13だった。
「また会おう」
「それじゃあね」
 二人で話してそうしてだった。   
 良晴はブリーフ13と別れ空港に入った。そうして空から日本に戻った。最後の旅だけは平穏に進み終わり日本に辿り着いた。その彼を待っていたのは就職と賞金に見合い、そして結婚という怒涛の幸せラッシュだった。
 彼は旅から幸福を手に入れた。だがもう一度ブリーフ13と共にヨハネスブルグに行ってみるかと問われれば常にこう言った。
「絶対に嫌だからな」
 あの街とあの男は嫌だというのだ。そのどちらも。
 彼にとっては悪い思い出ではなかった。幸せも得られたいい意味での人生のターニングポイントにもなった。忘れられるものではなかった。
 しかしもう一度と問われると必ずこう言った。悪い思い出ではなくなってもそれでも二度と行きたい街ではなかったし二度と共に旅をしたい相手ではなかった。どちらもそうだった。


若者は旅立って   完


                             
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