第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第67話 明かされる秘密
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答えであった。そう返事を返しながら彼女は思っていた。
──こういう経緯になったのも豊姫様の計算通りだったのかと。
その可能性は高いだろう。豊姫が普段まったりとしているのは、それが彼女の全ての本質でない事は侵略者を迎え打った時に分かったのであるから。
掴み所のない豊姫の事だから、それを指摘してもきっとはぐらかされてしまうだろう。
だからイシンは──心の中で彼女に感謝する事に決めたのである。
そう心に誓いながら、イシンは締め括りの為にこう言った。
「あの時に味わった緊張感から、私解ったんです。『命を張るって事は誰にでも出来るものじゃない』って」
「イシンさん……」
中々言えるようになる言葉ではない、勇美はこの時尊敬の眼差しでイシンを見るのだった。この人は自分が辿り着いていない境地を知ったのだと。
だから、勇美はこう言った。
「イシンさん、私とあなたとは住む場所が違うから中々会う機会がないかも知れませんが──これからもお願いします」
それが勇美が抱く本心であった。勇美は彼女には同志、ライバル、先輩等様々な感情を抱いてイシンと関わって行きたいと切に願うのだ。
勇美の言葉を聞いてイシンは暫し呆けていたが、やがて意識を持って言った。
「はい、よろしくお願いしますね」
そうしてイシンは満面の笑みで以てそう答えたのだった。
ここに勇美とイシンには風変わりな友情が生まれたのである。互いに二人は満更でもない心地よさを感じていた。
だが、勇美にはまだ聞きたい事があった。それを彼女は口にする。
「それで、イシンさんは豊姫さんと依姫さんの元を離れていったらどこへ行くのですか?」
それは更に重要な事柄であろう。何しろ月のリーダーたる綿月姉妹の元から巣立っていったイシンはどこへ行き着くのだろうかという話となる。
その疑問に答えるべく口を開いたのは依姫であった。
「最もな質問ですね。そして、それがイシンには先程まで玉兎達の前でレイセンを演じてもらっていた理由です」
「それはどういう事ですか?」
再び話が読めなくなったので勇美はまた首を傾げてしまった。
「それは、率直に言うとイシンには月の重役の補佐として取り入らせれるという話を進めているのよ」
「ええっ!?」
これには勇美は驚いてしまった。些か話が飛びすぎてはいないかと。
「そう、勇美も驚く事よね。だからこの事は他の玉兎達には秘密にさせたという訳よ」
「ですよね……」
事の重大さを知って呆けたまま、勇美は相槌を打った。
確かに依姫が配慮するのは最もだ。他の綿月姉妹の元で訓練を受けていた玉兎よりも後から入って来たのに、それを追い抜くような形でイシンは成り上がってしまったのだから。
玉兎達は純粋であり、人間程の妬みの感情は少ない。だが、全くない訳で
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