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乃木なれば
第二章
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「そう考えている」
「このままだな」
「そうだ、しかしだ」
 山縣は伊藤に苦慮する顔のまま再び答えた。
「何かとな」
「世の声が違ってきているな」
「乃木では駄目だとな」
「言ってきておるな」
「世の声は無視出来ん」
 山縣もそれはわかっていてこう言うのだった。
「どうしてもな」
「そうだ、だからだ」
 伊藤もその通りだと返す。
「あまり声が大きいとな」
「乃木を代えねばならん」
「そうだな、だが」
「言う者は乃木がわかっておらんのだ」
 山縣は苦い顔だった、だが強い声で言い切った。
「そして戦のこともな」
「わしも同感だ、戦は簡単なものではない」
「そこにいる者でないとわからんことが多い」
「あんたは特にそれがわかっておるな」
「当然だ、わしはそこに多くいたのだぞ」
 その戦いの場にとだ、山縣は伊藤に返した。西南戦争でも日清戦争でも軍を率いて戦ったからこう言えるのだ。
「それならだ」
「旅順のこともだな」
「言える」
 はっきりと、というのだ。
「本当にな」
「今あの地で戦える者はだな」
「将軍は乃木だ」
 伊藤に対して言い切って返した。
「あ奴だけだ」
「わしも同感だ」
 伊藤もこう返した。
「黒木達もいるが」
「それでもだ」
「乃木でないとな」
「今あそこでは戦えぬ」
「兵達もな」
「時が来れば児玉を行かせてだ」
 児玉源太郎、陸軍の至宝とさえ言われその智謀は底がないとまで言われる彼をというのだ。
「攻め落とさせるべきだが」
「それまではだな」
「乃木しかおらん」
 旅順での戦いを任せられるのはというのだ。
「だからだ、周りが何と言ってもな」
「お主は乃木でいくな」
「絶対にな」
 こう言ってだった、山縣は乃木を司令官のままでいさせた。乃木の更迭を言う者達は山縣が頑として考えを変えないのを見てだった。
 明治帝に言うことにした、陸軍を動かす山縣の上に立つ、大元帥であられるこの方に考えを変えて頂こうというのだ。
 だが帝は毅然として言われた。
「乃木でよい」
「ですが」
「旅順は落ちません」
「今もです」
「その気配はありません」
「このままではバルチック艦隊が来ます」
「そしてシベリアから陸軍がどんどん来ます」
「一刻も早く旅順を陥落させ」 
 そしてというのだ。
「黄海艦隊を壊滅させねばなりません」
「バルチック艦隊との合流を防がねば」
「そして旅順に張り付いている第三軍を北上させ」
「南下してくるロシア軍に向けねばなりません」
「その為にです」
「乃木大将以外の方を第三軍の司令官にしましょう」
「朕は言った」
 だがだった、帝はこう言われるのだった。
「乃木でよいな」
「それは何故でしょうか」
「乃木大将のま
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