第二章
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「酒でも」
「雪女は飲むでしょうか」
酒をとだ、大谷は政宗に問い返した。
「果たして」
「それはわかりませぬが」
「それでもですか」
「若し雪女と会えば」
その時はというのだ。
「酒を飲みながら」
「楽しく話をしたいですか」
「そう考えておりまする」
「流石伊達殿と言うべきか」
大谷は政宗のその言葉に彼の剛毅と傾奇を見て言った、彼のその伊達ぶりにはそうしたものも備わっているのだ。
「そこでそう言われるとは」
「いや、褒めても何も出ませぬぞ」
「ははは、確かに」
大谷は政宗の今の突っ込みには陽気な調子で返した。
「左様ですな」
「出ると言えば軽口だけ」
「そう言われますか」
「この様に」
今度は破顔して大谷に返す、そうした話をした少し後で。
政宗は領地の仙台に戻った、そこで新しく築かれた仙台城に入ってそこで領地の政に励んでいたが。
片倉小十郎と伊達成実の話を聞いてこう言った。
「ふむ、この仙台にか」
「はい、雪女がです」
「この仙台に出るそうです」
二人で政宗に話す、片倉はやや小柄だが如何にも利発な感じであり成実は背が高く姿勢しっかりしている、
「何でも」
「それも雪の降る夜に」
「雪が降る夜とな」
政宗は二人の話を聞いて言った。
「それだとな」
「よくあることですな」
「このみちのくでは」
「雪なぞいつも降る」
政宗はこうも言った。
「それは米沢だけでなくな」
「この仙台もですし」
「今話に出ましたがみちのく全体がです」
「まさにこの奥羽の冬は雪」
「雪に覆われますな」
「だから夜もな」
政宗は笑って言った。
「雪が降るわ」
「左様です、しかしお館様」
片倉は政宗に対して言った、伊達家は古来から家がある名門でありしかも禄も高いのでお館様という呼び名を許されているのだ。
「問題はです」
「どうして雪女に会うか」
「まさかと思いますが」
片倉はここでは懸念する顔になり政宗に言った。
「城から出られて」
「自分から雪女に会うか」
「そうされるのでは」
「ははは、そうすればどうする」
「それがしが止めまする」
「妖怪と会うのは面白いでしょうが」
成実も言ってきた。
「ですが」
「それでもじゃな」
「流石にそれは軽率かと」
「お主から見てもじゃな」
「左様、ですから」
「城を出て会いに行くことはな」
「小十郎も言っている通りです」
こう政宗に言うのだった、彼にしても。
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