第五章
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「仮にも九郎判官殿に剣術を伝授した身だぞ」
「お主達天狗はか」
「特にわしはその場におった」
九郎判官つまり源義経が牛若丸という幼名であった頃に鞍馬山で修行をしていたその場にというのだ。
「まだ若かったがな」
「それだけにか」
「その様なことはせぬ」
「九郎判官殿に剣術を教えた者として」
「その誇りはあるからな」
「だからか」
「お主達が害を為してくるなら別だが」
それならというのだ。
「しかしだ」
「それでもか」
「人が山に入る位ではな」
「何もせぬか」
「一切な、山や川の富は我等が不自由なく暮らしても有り余る」
それだけのものがあるというのだ。
「近所の村々の者達が暮らしの足しにする位ならな」
「よいか」
「うむ、この者達にも悪戯はさせぬ」
天狗は配下の烏天狗達を見回して藤田に話した。
「そのことも約束する」
「天狗の約束か」
「誇りある者のな」
「そうか、ならここまでの話をだ」
それをとだ、藤田は天狗に答えた。
「殿にお話する」
「それで終わりか」
「人に何もしないならな」
それでというのだ。
「わしがすることはそれだけだ」
「戦い追い返さぬか」
「うむ、だからな」
「それでか」
「これで帰る」
「そうするか」
「邪魔をした」
藤田はこうも言った。
「ではこれで暇乞いをする」
「そうするのか」
「ではな」
天狗に一礼した、平太も父のその動きを見て続いた。その後で藤田は彼に帰るぞと告げてそのうえでだった。
彼を連れて踵を返し山を後にした、そのうえで全てを藩主に話した。すると藩主は彼に複雑な顔になって言った。
「そうか、天狗であったか」
「そして人に害を為さぬので」
「そなたはことの次第を明らかになったことでか」
「よしとしました」
「では後はだな」
「はい、村の民達にことの次第を詳しく話し」
そしてとだ、藤田は藩主に話した。
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