第一章
[2]次話
埴輪
野見宿禰は相撲の勝負の結果垂仁帝に仕えることになった、だがそうなって彼はあることについて周りに述べた。
「わしが気になっていることがある」
「といいますと」
「それは何ですか」
「一体」
「うむ、帝だけでなく皇室の方々が世を去られた時だ」
彼は周りにこのことから話した。
「常に共に多くの者が葬られるな」
「それが習わしです」
「古来より続く」
「それが何か」
「何でも西の方ではそれがなくなったらしい」
宿禰は周りにこのことも話した。
「今あちらは何かと乱れておるがな」
「はい、何でも多くの胡が入り」
「そして天下は散り散りとなり」
「戦が絶えぬ」
「民は大変苦しんでおるとか」
「そうなる前にもうそうしたことはなくしたという」
西の方ではというのだ。
「かつて漢という国があった頃はもうな」
「そうなのですか」
「あちらではそうなのですか」
「そうなっていますか」
「うむ、だから本朝でもな」
この国でもというのだ。
「もうな」
「それは止めるべきですか」
「そうですあ」
「そう言われますか」
「うむ」
まさにというのだ。
「そう思う、だから帝にもな」
「申し上げられますか」
「葬儀の際に共に死なせる者を出させない」
「お供の者達は」
「人の命はどの様な者でも大きなもの」
それ故にというのだ。
「それはしたい、そしてな」
「それで、ですか」
「さらにですか」
「ありますか」
「皇室の方が去られる度の多くの者が共に死んでは国の者が増えぬ」
このこともあるというのだ。
「だからな」
「ここは、ですか」
「共に死ぬ者を出さぬ様にする」
「そう帝に言われますか」
「そうすべきと思う」
宿禰の言葉は確かなものだった、だが。
周りの者の一人が彼に言った。
「しかし」
「どうした」
「それはよいのですが」
それでもというのだ。
「共に死ぬ者がいなければ」
「共に冥土に行く者がいないな」
「そうなりますが」
「そのことだが」
既にとだ、宿禰はその者に答えた。
「もう考えてある」
「そうなのですか」
「うむ、それはだ」
宿禰はあるものを出した、それはというと。
土で造って焼いた人形だった、赤茶色で目や口のところが空いていて手は何かしらの構えや踊りを行っている感じだ。
その何かを見てだ、宿禰の周りの者達は言った。
「埴輪ですか」
「それは」
「面白い形をしていますが」
「土で造って焼いた人形ですな」
「そう、この埴輪をな」
宿禰は周りの者達に答えた。
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