第1話 開通
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する世界。その世界に存在する大陸、フィラデストロ大陸の一角に、『帝国』はあった。
『帝国』の首都たる『帝都』。その中央に位置する、白く輝く立派な建造物の中では、多数の人が何やら話し合っていた。
「大失態でしたな、皇帝陛下。我が帝国の保有する総戦力のなんと6割が喪失。さらに、『回廊』を設けた聖地、『クロナス島』を敵に奪取されるという事態。この未曽有の被害と新たに降りかかった危機に対し、如何なる対策をご講じられますかな?」
古代ローマと中世ヨーロッパの建築様式を組み合わせた様な、円形状となっている議場で、元老議員のナヴァル侯爵は、目前の一際高い段に据え付けられた席に座る者に尋ねる。
その彼の眼の前にいる、金髪で他の元老議員や将軍達とは明らかに立派な服を身に纏い、頭には王の証である王冠が被さっている男は、一つため息をついた。
この『帝国』の皇帝、ムルタ・フォン・イズラエールは、3代前の初代皇帝の時代より続く国是である、大陸の統一と周辺島嶼の征服にて一番多大な成果を上げている『名君』で、帝国に忠誠を誓う者には寛大な慈悲を与え、逆らう者には冷酷に死を賜る者として、畏怖と崇敬を抱かれていた。
ムルタ帝は頭を少しだけ抱えながら、ナヴァルに話しかける。
「ナヴァルよ、卿の心中は察するものである。此度の損失によって、我が帝国の軍事的優位が薄れたというのは確かだ。外国や諸侯達が一斉に反旗を翻し、一斉に帝都に攻め込んでくるのではないかと不安なのであろう?まことに、痛ましいことである」
自らの頭を抱えていた手を離したムルタ帝はナヴァルを見るが、それは決して悲痛な顔つきではなく、どちらかといえはからかっているかのような表情をしている。
「我が帝国は、此度のような未曾有の危機に直面する度に皇帝、元老院、そして国民が一致団結して更なる発展をしてきた。如何なる精強な軍勢であろうと百戦百勝は存在せず、必ずや敗北を経験せざるを得ん。故に此度の敗北の責任を追求はせぬ。まさか他国の軍勢が帝都を包囲するまで『裁判ごっこ』に明け暮れようとする者はおらぬな?」
ムルタ帝がそう言い放つと、周りの議員から少しばかりの笑い声が聞こえる。その様子にナヴァルは不満な顔で呟く。
「自分の責を不問に…」
「それに、対応策も然り講じておる。確かに『回廊』を開いたのは我が国であるが、属国や周辺諸国は真実をよく知らぬであろう。直ちに周辺国に使節を派遣せよ。現在、聖地クロナスを侵略し、この世界そのものを我が物にせんとする蛮族の集団が現れた。大陸侵略を目論む賊徒を撃退する為に、我が国に援軍を派遣せよ、とな!我等、連合諸王国艦隊を糾合し、クロナスへと攻め入る!」
ムルタ帝が立ち上がり、数百年前のお伽噺として
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