第95話『予選@』
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」
「俺は迷路とか得意っすよ」
「な、なるほど……」
伸太郎の申し出を聞き、終夜が考え込む。
実際、この案はかなり良い。下手に順位を下げるより、得意な人を割り当てる方が無難というもの。
ただ、これを受け入れてしまうと……
「俺、控えなの……?」
「そういうことになっちゃうわね」
「部長なのに……?」
「部長なのに」
その事実を確認すると、終夜がガックリと肩を落とす。
3年生で最後の大会なのに、まさか予選に出られないなんて。もしこれで予選落ちしようものなら、彼の魔導祭は呆気なく終わってしまうことになる。そんなのあまりに可哀想だ。
それなのに、1年生に出番を譲って文句も言わないなんて、ちょっと甘すぎるのではなかろうか。
「部長……」
晴登は思わずそう洩らしてしまった。結月を責めるつもりはないが、彼女の一言が無ければ彼は出場できていた。
……やっぱり、3年生が予選に出れないなんてダメだ。ここは"競走"の枠を彼に──
「変なこと考えるなよ、三浦」
「えっ」
「お前今、俺に出場枠を譲ろうと考えただろ?」
「何でわかったんですか!?」
終夜の言葉に晴登は驚く。
というかなぜだろう、最近やけに考えが読まれてしまう。そんなに顔に出ているのだろうか。
「そんな情けはいらねぇ。悔しいが、俺がいない状態の方が完璧な布陣なんだからな」
「でも……」
「まだ言うか。……ならこれだけ言わせてくれ」
割り切った終夜に食い下がろうとすると、彼は少し考えた後に言った。
「部長命令だ。予選を突破しろ」
簡潔に一言。
しかし、その一言の持つ意味は絶大である。3年生である彼に、本戦出場という花を持たせてやることが、1年生である晴登たちが絶対に成し遂げなければならないことなのだから。
「今年の魔術部は強い。中学生とはいえ、俺たちみたいに実戦経験がある魔術師は、大人にもそうそういないからな。今回は予選落ちなんかで終わらせるつもりはないぞ。必ず、本戦に行くんだ」
終夜は強く、そう宣言した。
中学生である魔術部が予選を突破する可能性は、ほとんどゼロに近い。それでも、部長である終夜がやれと言ったのだ。それに応えるのが、部員の役目というもの。
「俺は、お前らを信じてるぞ」
終夜はそう言って、いつものように元気な笑みを浮かべた。
……相変わらず、言葉を選ぶのが上手いんだから。そう言われたら、やらない訳にはいかないではないか。
「それじゃ、【日城中魔術部】出陣だ!!」
「「おう!!」」
幼き少年少女の戦いが、今幕を開ける──。
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