暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
四十 孤独の先
[8/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
寄る足音に耳を澄ませる。


「……人払いをしていたはずだが?」
「はて?聞いておらんな」

綱手の非難を柳に風と受け流し、志村ダンゾウは涼しい顔で火影室へ足を踏み入れる。
火影の傍に控えるシカマルをチラッと横目で見やり、ダンゾウはふん、と鼻を鳴らした。

「人払いなどというから、てっきり暗部とでも秘密裏に会話しておるのかと思いきや…いやはや、」


中忍であるシカマルを明らかに馬鹿にした物言いで、ダンゾウは嗤う。
この場にいるのがナルやキバといった頭に血が上りやすい忍びならダンゾウの挑発に乗って、火影と何を話していたか、うっかり口を滑りそうだが、あいにく此処にいるのは奈良シカマル。
綱手との話をさりげなく聞き出そうとするダンゾウの口車に乗るはずもない。

直立不動のまま、無言を貫くシカマルに、当てが外れたのか、ダンゾウは面白くなさそうに再度鼻を鳴らすとようやく綱手に向き合った。


「此度の任務で、ワシの部下が二人も死んだ。この落とし前はどうつけてくれるのかね、綱手姫?」
「どの口が…っ!!」

以前、左近と鬼童丸を天地橋へ向かわせると取り決めたダンゾウは綱手の前で、彼らを捨て駒だと自ら吐き捨てた。
にもかかわらず、舌の根の乾かぬうちにそのような調子の良い言葉を述べたダンゾウに、綱手は火影机を強かに叩きつける。
ちなみに、左近は自らの能力をダンゾウに秘密にしていた為、ダンゾウも綱手も、左近と右近が別個体に分離できるとは知る由もなかった。


「自分の部下を見殺しにしたのはアンタだろーが!!」
「さてはて…」

怒りを辛うじて抑えつけている綱手に対し、ダンゾウは愉快げに双眸を細めて笑う。
その笑い方に、傍らで控えるシカマルも非常に不快を感じて、眉を秘かに顰めた。

「ところで…抜け忍である春野サクラの処罰はもう下したのかのう?」
「チッ……耳が早いな」

舌打ちする綱手にも、ダンゾウは機嫌を損ねず、むしろクツクツと肩を震わせる。

「なぁに。木ノ葉の平穏な暮らしを脅かす危険に敏感なだけよ」

どの口が…、と再び口の中で同じ言葉を呟いた綱手は、はたと気づいた。

「おい…その物言いだと、サクラが危険だと?」
「当然であろう?元・木ノ葉の抜け忍がのうのうと以前と同じ暮らしに戻れるはずもあるまい。他の里人が平穏に暮らせると思うか?」
「……っ、」


確かに、一度抜け忍となった人物が里に戻っても、抜け忍というレッテルから周囲の人間はサクラを信用しないだろう。
むしろ遠ざけ、危険視する可能性もある。

ダンゾウの言い分もわかるからこそ、シカマルは唇を噛みしめた。
反論したい思いをぐっと堪える。
ここで反論したところで相手はあの、ダンゾウだ。
五代目火影の不利にな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ