四十 孤独の先
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て、初めてスリーマンセルのチームが決まった日。ナルのことを馬鹿にした私に怒ったわよね」
耐え切れず、サクラの翡翠色の瞳から涙がポロリと零れる。その一筋の涙が地面に染みをつくるのを、サスケは無表情で眺めていた。
地面にじわじわと増えゆく染み。
サクラの双眸からポロリポロリと零れゆく涙を眺めるサスケの脳裏に、木ノ葉の里でのかつての出来事が思い出されてゆく。
憶えている。
あれは────確か、波風ナル・春野サクラ、そしてサスケが初めてスリーマンセルを組み、サクラと二人きりになった時に彼女と話した会話だった。
両親がいない波風ナルのことを、当時見下していたサクラは「ナルの奴、ひとりで親にガミガミ言われることもないから我儘なのよ」とサスケに言い放った。
あの頃のサクラはとにかく自分にサスケを良く見てもらいたかった。
サスケの同意を得たかった。
ナルの悪口を言うことで彼女より優位に立ち、サスケに自分を見てもらいたかった。
だが、ナルと同様、孤独なサスケには逆にサクラへの苛立ちが増すばかりだった。
「孤独ってのはな…親に叱られて悲しいってレベルじゃないぞ」
ナルを馬鹿にしたサクラを、サスケは「お前、うざいよ」と一蹴する。家族を失ったサスケだからこそ、言える言葉だった。
怒られ、言葉を失うサクラはその瞬間からナルへの認識を改め始めた。
そのきっかけをつくったサスケは、サクラが語るかつての出来事を憶えていながら素知らぬ顔で答える。
「……記憶に無いな」
素っ気ない返事に、サクラはショックを受けた表情でサスケを見上げた。
涙で濡れる翡翠色の瞳から、サスケは顔を逸らす。
「そ、そうだよね!もう随分前のことだもんね」
無理に明るく振舞って、サクラは笑う。
けれどその痛々しい笑顔に、いのは顔を顰めた。
「でも…私はあの時、サスケくんに怒られたから…そしてサスケくんを追い駆けて里を抜けたからわかったの………孤独の辛さを」
家族や友達、里の皆を全て失い、サスケを追って大蛇丸の許へ向かったからこそ、あの時言われたサスケの言葉が痛いほど、今のサクラにはわかった。
「また此処から…それぞれ新しい道が始まるだけだ。俺とお前達はどうあっても相容れない道にいる…俺には俺の、お前達にはお前達の道がある。それだけだ」
ナル・いの・シカマル・ヤマト…そしてサクラの顔を一瞥してから、サスケは静かに眼を閉ざす。
「だからサクラ…お前はもう俺に構うな」
「サスケくん…!あなたはまた…!自ら、孤独になるの!?」
“暁”へ向かうということは自ら独りになると同義。
今まで以上に過酷な道を進もうとする彼を、しかしながらサクラは追い縋った。
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