第1部
アッサラーム〜イシス
宝箱と罠
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と、石壁の部分は大きくえぐれており、人喰い箱の攻撃力の強さが窺える。
ユウリは再度、息つく間もなく、いまだ動けない人食い箱の背後ががら空きになったところを袈裟斬りにした。
「くっ、まだダメか」
たたらを踏んで、誰にともなく呟くユウリ。どうやら魔物の体力は予想以上に高いらしい。私たちも加勢に行きたいが、ユウリですら苦戦している相手に勝てる自信などなく、その場で踏みとどまらざるを得ない。
そうこうしてるうちに、再び人喰い箱はユウリに向かって襲いかかろうとしている。これも避けるのか、と思いきや、足元がふらついてるではないか。見ると、顔には脂汗が浮いており、左腕には新たに血が滲んだ跡がある。
ちょっと待って、まさか、攻撃を食らった?! でも、一体いつ?!
さっき避けて、そのまま魔物が壁にぶち当たったときだろうか? ということは、完全に回避できなかったんだ。
私はたまらず、前に出ようとした。しかし、
「来るな!!」
ユウリにぴしゃりと止められた。でも、負傷してるのに助けにいけないなんて、辛すぎる。
歯がゆさだけが残る中、ユウリは苦痛で歪んだ表情を自ら消し、一瞬目をつぶった。集中しているのか、これまでにないプレッシャーを感じる。
人喰い箱が次の攻撃に備え、こちらを振り向いた瞬間だった。
「ライデイン!!」
声高にそう呪文を唱えると、真上に掲げたユウリの右手から光が集まりだした。その光から放たれているのは稲妻のようであり、周囲の大気を震わせるほどの威力がうかがえる。
ユウリが右手を下ろし魔物のいる方へと向けると、稲妻は複数の光の竜となって対象を貫いた。
焦げ臭い匂いが充満すると、人喰い箱は灰となって消えた。
「すっ、すごい……」
私たちが呆気にとられていると、人喰い箱を倒したユウリは、怪我がひどいのかその場に膝をついた。私が駆け寄ると、彼はすぐさま回復呪文ををかけた。
「ベホイミ」
確かベホイミは、ホイミよりレベルの高い、上位回復呪文だ。それを使わなければならないほど、酷い怪我だったのだろうか。
「大丈夫!? ユウリ」
血の染み付いた左腕をちらっと見る。肉が裂け……いや、詳しい説明は省くが、パッと見てこれは重傷と思えるくらいの傷の深さだった。全然大丈夫ではないのがわかる。
「悪い。オレが考えなしに宝箱開けちまったから……」
傷が塞がり始めると、ユウリは深く息を吐いた。
「全くだ。このバカザル」
それだけ言うと、ユウリは多少ふらつきながらもその場に立つ。心配そうにシーラがユウリの体を支えようとするが、彼は手で制した。
「一度、町に戻るぞ。体勢を整える」
一瞬戸惑ったが、すぐに理解した。このまま先には進めない、というリーダーの判断だ。
この状況で先に進むのは、無謀すぎる。私たちは是非
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