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泣くことはない
第五章
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クラスを後にした。それからだった。
 今度はすみれが批判された。失恋の原因も何処からか漏れてだった。
 いつも聞こえる様に陰口を言われた。部活のマネージャーも辞めることになった。
 友達も殆どいなくなった。だが泣くことはなかった。
 一人でいる彼女のところにある日先輩が来た。下校中に隣に来てくれたのだ。
 背が高く胸が目立つ、癖の強い茶色の髪をした垂れ目の先輩だ、その先輩がこう一人でいるすみれに対して言ってきたのだ。
「辛いわよね」
「はい」
 すみれは俯いて答えた。
「とても」
「こうなった理由はわかるわよね」
「私が自分でしたことです」
 俯いたまま先輩にまた答えた。
「全部」
「そうよ。相手の彼は許してくれなかったわね」
「二度と貌を見たくないって言われました」
 すみれは貌をあげることができなかった。その時の彼の怒りに満ちた顔と周囲の批判する声が忘れられなかった。
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