第三章
[8]前話
ふとだ、かずくんが沙耶のところに来た。そして座ってじっと彼女を見だした。猪木はその彼を見て言った。
「ひょっとしてな」
「遊んで欲しいみたいね」
「そうだよな」
「それじゃあね」
沙耶は猫のおもちゃ猫じゃらしに似たそれを出してだった。
かずくんの前でおもちゃを振りだした、するとかずくんはそれにしきりに跳びつきだした。かなり必死の様子だった。
そして一緒に遊ぶ沙耶はにこにことしていた、猪木はそんな彼らを見てリキュールを飲みつつこう言った。
「何かな」
「どうしたの?」
「物凄く幸せそうだな」
「凄く幸せよ」
沙耶も否定しなかった、その間も遊んでいる。
「実際にね」
「そうなんだな」
「かずくんと一緒にいたらね」
それでというのだ。
「本当にね」
「そうだな、僕もそんな沙耶ちゃんとかずくん見ていたら」
今度はポテトチップスを食べつつ言った。
「そんな気持ちになるよ」
「幸せな気持ちに」
「どっちも楽しそうだから」
それでというのだ。
「そう思うよ」
「そうなのね」
「うん、それじゃあ僕も猫飼おうか」
「そうするの」
「うん、そうしようかな」
「そうしたらいいわ、猫って凄く可愛いから」
「それじゃあね」
猪木は彼女の言葉に頷いた、それでこの日は彼女とかずくんを見ながら飲んだ。そして後日里親募集をしていた雌の黒猫を引き取ってみかと名付けた。
すると今度は彼が猫に夢中になって沙耶に話した。
「いや、昨日もな」
「やんちゃだったの、みかちゃん」
「ああ、けれどな」
「そのやんちゃさがいいのよね」
「愛嬌あるな、退屈しないしな」
「そうでしょ、だから猫っていいのよ」
「本当にな」
笑顔で話した、そしてだった。
二人でそれぞれの猫の話をする様になった、そこから仲はさらに親密になり二人は結婚した。すると猫達もそうなってお互いに幸せに暮らした。
貴公子との生活 完
2020・9・23
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