暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第51話 若気の驕り
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
い関係にある人物が最も汚染されているのは世の真理だ」
「彼女もそうなると?」
「一度でも住んでいる世界全体からの抗体反応を受ければ、人間の良心などたやすく粉砕される。ましてや一五歳、それも高級軍人の娘。発生源が近親であるがゆえに、精神の再建はたいてい即効性の高い『憎悪』でなされる」

 それはあまりにも一方的な見方だ、とは言い切れない。犯罪者の家族が周囲からの圧力で崩壊し、その行き着く先が非合法な組織などという事例は、地球時代でも日常茶飯事だ。だからと言って一五歳の少女が市中に放り出されるよりはまだマシな軍内であっても、孤立状態にあっていいという話ではない。それこそ予防措置が必要であって、中佐が考えている予防措置が俺の考えとは全く違うというのはわかる。

「だが個人的には実に痛快で面白い。優しすぎて、隙だらけなのが難点だな」
 そう言うと、モンティージャ中佐は目付きを糸からどんぐりへと戻した。今後も当然のように警戒するが、少なくとも軍外とは違って年齢相応の少女に対する程度にするという中佐の言外の回答に、俺は頷いてさらに突っ込んでみた。
「もし彼女が『闇落ち』みたいなことになったらどう対処されるんですか?」
「一度も銃を握ったことのない少女の制圧などわけないさ。それこそ情報部の伝統芸というやつだよ」
 そう言うと中佐はバグダッシュとよく似た気持ちのいいサムズアップを俺に見えるのだった。

 その一方でつまらない反応をしてくれたのが、補給参謀となったのがギー=カステル中佐で、四つ年上の二九歳。フランス系の血を色濃く残す彫りが深く整った容姿と長身の持ち主だ。

一学年下になるキャゼルヌ曰く『典型的な秀才で、問題がなければ中将。後方支援本部次長や本部下補給計画部部長くらいにはなれるだろう。与えられた職権範囲で対処できる問題は手際よく片すことができる。だがそれを超えた時の融通が利かない。まぁ彼の手に余るような事態などそうあるものでもないが』と珍しく苦々しい表情で言っていた。褒めるのが下手なわけでもないキャゼルヌがこうも言いにくいということは、何か問題があるのかと言えば、やはりその通りで。

「彼女に昼食を作らせている理由は何だね?」
 初対面で一回り(この時代に干支はないんだが)以上は年下の少女が香辛料の薫り高いジャンバラヤを持ってきたところで、冷たい視線を俺に浴びせてくる。
「この部隊に配属される以前に、彼女とはいささか面識がありまして。その時ご馳走になった彼女の料理が実に美味でして」
「正確に答えたまえ。君も知っている通り、彼女はあのリンチの娘だ」
「はい中佐。仰る通りですが?」
「我が部隊に無用な誤解を避けるうえで、配慮する必要があるのではないかね?」
 どこかで聞いたことのあるようなセリフではあったが、言っているカス
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ