第1部
アッサラーム〜イシス
ピラミッドでの攻防
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らぬ叫び声をあげながら、その魔物に向かって回し蹴りを放った。シーラも魔物に驚いたのか、それとも私の形相を見たからなのか、半泣き状態で手近な石を投げまくる。
「ちょっ、お前ら、落ち着けって! あんまり騒ぐと他の魔物が……いてっ!!」
ナギが私たちを落ち着かせようと宥めるが、シーラの放った石が顔に当たったらしく、沈黙してしまった。
それでもまだ魔物は起き上がると、今度はシーラに向かって倒れ込んできた。シーラは間一髪避けることができたが、その際尻餅をついてしまい、すぐに起き上がることが出来ない。
「危ない、シーラ!!」
私が叫ぶが、魔物の次の攻撃が繰り出される。もう間に合わない!! そう思った瞬間、見覚えのある白刃の太刀筋が見えた。
これって、もしかして────!
「お前らはなんでいつもそんなに騒がしいんだ?」
ミイラ男の胴が真っ二つに裂け、そこから現れたのはユウリだった。
松明で多少明るくはなっているが、ほんの数メートル離れるだけでも真っ暗なこの場所で、ユウリは的確に魔物を仕留めたのだ。
「ユウリ!! 無事だったんだね!!」
私は喜びのあまりつい大声をあげてしまい、慌てて口元を手で抑える。
「おい間抜け女。あれだけ騒いどいて何今さら音なんぞ気にしてるんだ。もうここ一帯の魔物はあらかた片付けたぞ」
「ええ?! そうなの?!」
そう言われてみれば、あの魔物を倒したあと、すっかり魔物の気配はなくなっている。まさか、本当に一人でこの辺りにいた魔物を倒してしまったんだろうか?
「ユウリちゃーん!! ありがとう〜!!」
がばっとユウリに抱きつくシーラ。もしユウリがいなかったら、今頃シーラはどうなっていたかわからない。私はほっと胸を撫で下ろした。
三人のうち呪文が一人でも使えてたらまだ多少は余裕もあったのだろうが、薬草でしか回復手段のない私たちには一つのミスが命取りになってしまう。その事を今身をもって体験して、私は心の中で猛省した。
「……ったく、これじゃどっちが助けにきたかわかんねえな」
「た、確かに……」
嘆息したナギの呟きに、私は思わず頷いてしまった。
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