第1部
アッサラーム〜イシス
ピラミッドでの攻防
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のか、寒いわけでもないのに小刻みに歯が震える。
「落ち着けって。とりあえず、この先何があるかわかんねえから一旦引き返すぞ」
低く落ち着いた声で、冷静に話すナギ。彼がここに残っているだけで、何よりも頼もしくて、ありがたかった。
だが、先に進もうにも、前方には落とし穴があるのでうかつに近寄れない。ここはナギの言うとおり、一度引き返して体勢を整えることにした。
ユウリのことだから、きっと無事に生きてるはずだ。そう信じて、まずは彼と合流しなくては。
とりあえず、私たちは入り口まで戻ることにした。途中何か抜け道がないか辺りを念入りにチェックする。隠し扉や床に仕掛けがないか、些細な変化も見逃さないよう見比べ、さらに魔物の気配にも気を配る。
なんてやってる間に、特に怪しいところも見つからないまま入り口にたどり着いてしまった。
「うーん、てことは、やっぱり落とし穴の向こう側に行かないと先へ進めないってことか」
落とし穴は道を丸々塞いでいるわけではなく、人一人通れるくらいの隙間はあった。だが、もう他に落とし穴はないとは言いきれない。それを確かめるにはやっぱり通らないと駄目なようだ。
「ユウリもこの先にいるかもしれないし、一か八か行ってみる?」
そう私が提案し、ナギが返事をしようとしたとき、ひとり離れたところにいたシーラが私たちを呼んだ。
「ねえねえ。あそこ、変じゃない?」
ピラミッドの外に出たシーラが指差す方へ目を向けると、外壁のすぐ傍に一つだけ、不自然に置かれている大きな四角い石があった。石で積まれたピラミッドなら、一つや二つ石が転がってもおかしくはないのだが、あれはどっちかといったら、人が作為的に置いてあるような感じだ。
直感的に怪しいと感じた私は、足早にその石に近づいてみた。ナギも同じことを思ったらしく、石の周りを入念に調べ始める。すると、
「見ろよ。引きずったあとがあるぜ」
ナギの言うとおり、地面に石を引きずったような跡がうっすらと残っていた。
「てことは、この石を動かすことができるってこと?」
「たぶんな。皆、手伝ってくれ」
言われるまでもなく、私たちはナギと一緒に石を押した。どれくらいかかるかと思われたが、三人よればなんとやら。徐々にだが重たい石はゆっくりと動いてくれた。
そして足元には、地下へと続く階段があったのだ。
「もしかしてこの先にユウリがいるんじゃない?」
「ああ、たぶんな。この先も罠とかあるかもしれないから、気をつけて進もうぜ」
そういうとナギは先陣を切って階段を下り始めた。私たちもあとに続いてゆっくりと下りていく。
ぐしゃっ。
「ふぇっ?」
固い木の枝のようなものを踏んだ感触に、私は言い知れぬ不安がよぎった。こんなところに木の枝なんかあるはずがない。恐る恐る下を見る。する
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