暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第50話:水月で愛を語らう
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外すどころか少しバランスを崩しただけでも海へドボンと言う状況で、足場も分からずに下りようと言う気にはとてもなれなかった。

 結果、奏は颯人にお姫様抱っこをされたまま海上を文字通り散歩することになったのである。

「どうだ、奏? これが本当の海上散歩って奴だ」
「馬鹿な事言ってないで、頼むよ? 颯人が一歩足踏み外したらアタシまで落ちるんだからね?」
「心配性だねぇ、奏は。この程度俺なら目を瞑ってても…………とっとっとっ!」

 突然バランスを崩して颯人がよろけると、奏は落とされては叶わないと思わず彼の首にしがみ付いた。


「わわわっ!? バカバカバカしっかりしろ!?」
「とっと…………な〜んちゃってな。どうだ、少しスリルあっただろ?」
「〜〜〜〜!? 颯人ッ!?」

 揶揄われたと知り、思わず怒鳴り声を上げる奏だったが颯人は楽しそうに笑い続けている。
 そのまま颯人は歩き続け、途中奏をしょうもない話で揶揄った。落ちないようにと彼にしがみ付く奏は、彼の話もあってか自分達が陸地から思っている以上に離れた事に気付いていない。

 と、今度は何を思ったのか颯人は立ち止まると、奏を抱えたまま背後に振り返った。
 今度は何をやるつもりだと身構える奏だったが…………彼が振り返った先で広がる光景に言葉を失った。

「あ……」

 海の上から見る陸地の景色。それは太陽の下で広がるものとは異なる煌びやかなものであった。

 大小様々なビルに灯る光、それは周囲に光がない海の上で見るからこそ分かる人の営みが創りだす輝きだ。昼間は絶対拝むことのできないその光景に、奏は言葉では表現するのが難しい美しさを感じた。

 海の上から見る街の夜景に目を奪われる奏を見て、颯人は笑みを浮かべると自分も目の前に広がる景色に目を向けた。

「見えるか、奏? これ、ぜ〜んぶお前が今まで頑張ったから見れるものなんだぜ」
「え?」
「これだけじゃねぇ。ここに来るまでに見てきた景色も、そこに居た人達も奏が翼ちゃん達と一緒に頑張ってきた証だ。スゲェ事だって、俺は素直に思ってる」

 そこまで言って、颯人は景色に向けていた目を奏に向ける。彼が自分の方を見てきたのを気配で察した奏が見返すと、そこには心の底から彼女の事を愛おしいと思っているのが分かる颯人の顔があった。
 純粋な好意のみで作られた笑みを見せる颯人の顔から、奏も目を逸らす事が出来ない。頬を赤くしつつ、彼女も彼の顔を見つめていた。

「人一倍頑張り屋で、投げ出さず、面倒見が良くて、優しさを忘れない…………ホント、凄い女だよ……奏は」
「あ──────」

 それはある意味で彼女が一番聞きたかった言葉。颯人からの混じり気の無い称賛に、奏は言葉を返す事が出来なかった。

「そん
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