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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第50話:水月で愛を語らう
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とりあえずこれ元に戻してくれ」

 まるでデュラハンの方に自分の首を自分で持って近付いてくる颯人の姿に、男達は恐れ戦き恥も外聞も無く悲鳴を上げて逃げ出した。

「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」
「あ、あっち行け化け物っ!?」

 情けない悲鳴を上げて逃げる男達を黙って見送る颯人と奏。奏は、今の颯人の状態を見ても全く動揺した様子を見せない。それが手品だと分かっているからだ。

 その奏の認識を証明するかのように、颯人は首を元の位置に戻した。

「全く、この程度で逃げ出すとは大した事ねえなぁ」
「そりゃいきなり目の前で首が落ちた上に、それを自分で持ち運んだりしたらビビるだろうよ」

 別に男達に同情するつもりは全くないが、それはそれこれはこれである。何も知らない状態でそんな場面に出くわしたら、奏も驚かずにいる自信はない。
 逃げ出すかはまた別問題だが。

「ま、何にせよ助かったよ。ありがとう」
「どういたしまして。さ、夜はまだ長い。腹も膨れたなら、続きと行こうぜ」

 奏が食べ終えた発泡スチロールのトレーを受け取り近くのごみ箱に捨てると、颯人はヘルメットを被りマシンウィンガーに跨った。奏も予備のヘルメットを被ると、彼の後ろに座り直し彼の背にしっかり抱き着いた。

 奏がしっかり掴まったのを確認するとマシンウィンガーを走らせ始める颯人。
 流れていく夜景を眺めながら、奏は先程の出来事に既視感を覚えていた。

 近付く悪漢を手品で撃退する。それはまだ2人が子供だった頃、奏に悪意を持って接しようとしてきた連中を彼が追い払った時と同じ出来事である。

 あの時と同じようにして助けてくれた彼に、奏は胸の奥に温かいものを感じずにはいられなかった。知らず、奏が颯人に抱き着く力が強くなる。

 突然腕に力を込めてきた奏に、しかし颯人は何も言わずそのまま走らせていた。




***




 その後、2人は時間の許す限りあちこちマシンウィンガーを走らせた。

 夜になっても未だ人通り車通りの多い街中。赤信号で停まると、時折2人の事を羨ましそうに恨めしそうに見てくる視線を感じた。

「颯人、何か見られてない?」
「独身連中からすりゃ、こんな時間にバイクでタンデムしてる俺らは羨ましくて仕方ないんだろ。それもこんな時間とくりゃ」

 明言はしなかったが、傍から見たらカップルに見えると言っているも同然の颯人の言葉に、奏は満更でも無い様子で颯人の背に身を委ねた。それが周囲の働く独身男女の嫉妬を誘い、先程以上に強い視線を感じる原因になった。

 日中響達と共に向かった高台へと続く道。そこを走りながら上から見る夜景は、夕方に見たのとはまた違う景色で奏を再び夢中にさせた。

「……夕方にも上からこの景色
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