迷子の迷子のチー君
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茶会のような白いオブジェが設置されている優雅な場所で、ごくごく普通の少年が泣いていた。
ハルトとまどかは少し顔を合わせ、近づく。
「ね、ねえ。どうしたの?」
まどかがしゃがみながら尋ねる。だが、少年は「お姉ちゃん……!」としか口にしない。
「ね、ねえ……君。迷子だよね? お名前は?」
「お姉ちゃん、どこ?」
四、五歳くらいの少年は、まどかの言葉に応えない。いよいよ困り果てたまどかに、ハルトは交代を申し出た。
「ど、どうするんですか?」
「こういうのはね、まず安心させた方がいいんだよ」
ハルトは子供の前でしゃがみ、両手を合わせる。握りを作り、子供がそれに気付くまで数十秒。
「いい? 見てて」
種も仕掛けもございません。ハルトがぱっと手を離すと、その中には、いつの間にか手のひらサイズの折紙飛行機があった。
「……?」
泣き止んだ少年がじっと飛行機を見つめている。上手くいったと内心喜んだハルトは、その飛行機を飛ばした。
夕焼け空へ滑空する飛行機の後を、少年はじっと見つめている。
「もう一個見せようか?」
ハルトの言葉に、少年は元気に「うん!」と頷いた。
「よし。そうだな……何か、好きなものはある?」
「好き? うーん……」
少年は、少し考えた。「よーく考えよう」という、何度か聞いたことがあるフレーズを口ずさみ、ようやく結論を口にした。
「鳥さん!」
「鳥?」
丁度頭上で、烏が鳴いた。
「うん!」
「よし。じゃあ、見ててね」
ハルトは両手をよく見るように言う。何もない掌と手の甲。左右に何もないことを示したハルトは、右手で筒を作り、その上に左手をかぶせる。
「そういえば、君、お名前は?」
「僕、チー」
「チー?」
「チー……」
少年は、なぜか口詰まる。幼子には言いにくい名前なのかと判断したハルトは、
「じゃあ、チー君、かな?」
「うん! みんなチー君って」
「じゃあ、俺もチー君って呼んでもいいかな?」
「うん!」
「ありがとう。じゃあ、これはお礼」
ハルトは少年チー君の視界を遮るように、左手の蓋を開ける。すると、右手の中には、小さな折鶴が収められていた。
「鳥さん……!」
チー君は、目をキラキラさせて、それを掴み取る。
「鳥さーん!」
チー君は折鶴を掲げ、まどかにも見せつける。
「うん。鳥さんだね」
まどかも頷いた。
ハルトはチー君の頭を撫でたあと、
「君のパパとママはどこ?」
と尋ねた。
しかしチー君は首を振る。
「ママは大好き。パパはよくわかんない」
「……?」
よくわかんない。親を形容するには少し
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