迷子の迷子のチー君
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、ずっと入院しているの。ここの病室で」
「恭介はさ……ずっとバイオリニストを目指して頑張ってきたんだ」
まどかの説明を、さやかが引き継ぐ。
「事故でさ。両腕が、バイオリニストとしてはできなくなる怪我。お医者さんによれば、もう医療で助かる見込みはないかもしれないって」
「それ……本人は知ってるの?」
「うん。それに、そもそも何となく分かっていたって」
さやかが病室を少しだけ覗き込む。引き戸の間にわずかに漏れる夕日の光を、彼女は悲しそうに見つめていた。
「できることなら……代わってあげたいよ。こんなアタシの腕なんて、多少使えなくなってもいいのにさ……何だか、ごめんね。初めて会った人にこんな話」
「いや。いいと思うよ。そういう、他人のためになんでもって、俺は知らない気持ちだから」「そう?」
力なく微笑んださやかは、ふうっと深呼吸する。
「じゃあね。まどか。また明日」
「う、うん」
走り去る彼女の姿を、まどかが不安そうに見送っていた。
「……ねえ、ハルトさん」
さやかの元気そうに見える後姿を見送りながら、まどかが尋ねた。
「何?」
「私……もしも、私が、上条くんの腕を治すよう願ったら……キュウべえに……」
「それは絶対にやってはいけない」
それ以上は言わせるものかと、ハルトは堅い声で返した。同時に、施設周囲を警戒する。白い壁、白衣。エトセトラ。だが、どこにも神出鬼没な白い小動物はいない。
改めてハルトは、
「あの営業動物に何を言われても、聞いてはいけないと思うよ」
「でも……上条くんは」
「感謝するだろうね。さやかちゃんも同じだろうけど。でも、それだけだよ。君はそれだけのために、一生ほむらちゃんのように戦えるの? 俺みたいに戦うの?」
「それは……でも、こんな私でも誰かの役に立てるなら……」
「自己犠牲が美しいのは、物語の中だけだよ」
全ては、まどかを魔法少女というものにしようとする、キュウべえという妖精のせいだ。まどかを魔法少女にしようとして、事あるごとに願いを叶えるといい、またハルトにとっては聖杯戦争に参加させた元凶でもある。
「でも……」
だが、中学生の少女には、それでも理解できていないようだった。
ハルトは、少し残酷だが、具体的な話をしようと判断した。
「君が仮に、魔法少女になったとしてだよ。家族はどう思うの? タクミ君は? お姉ちゃんがある日からいなくなったって聞いたら、悲しまない?」
「うん……」
少しは分かってくれたのだろうか。まどかは、ゆっくりと頷いた。
「お姉ちゃん……」
迷子だ。
病院外の敷地で、ハルトはそんな事態に遭遇した。
広い敷地の中庭。中世のお
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