見滝原中央病院
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ん……あの暗闇の中、私は響さんに救われました。あの人の凛々しさ、美しさ。まさに、私が追い求める理想像です」
「ココアちゃんが聞いたら泣くよ」
「私、響さんをお慕いしています! どうすれば……どうすれば響さんに会えますか?」
ベッドから降りて、チノは一気にハルトに接近した。
「速く響さんに会いたいです! 助けてくれたお礼がしたいです! ハルトさん、知ってましたか? 響さん、本当にすごいんです! 凄い鎧で、悪い怪物をバッサバッサとやっつけて、私とマヤさんを守ってくれたんです!」
饒舌な彼女への対応に困り、ハルトは視線でマヤに助けを求める。しかし彼女は、『この一週間ずっとこんな調子』と肩を窄める。
ハルトは少し考えて、
「わ、分かった! 俺も、何とか響ちゃんを探してみるから! 多分、コウスケに連絡取れれば会えるから!」
「本当ですか?」
「本当本当! だから、今は治療優先な?」
「私本当にもう元気ですよ?」
「医者の言うこと聞いてよ」
「……分かりました」
しゅんとおとなしくなったチノは、そのままベッドに戻る。
「チノちゃん……そんなに響ちゃんのこと好きだったっけ?」
「違う違う。一目惚れだよ」
すると、マヤが頭の後ろで両手を組みながら答えた。
「アタシらさ、その響って人に助けられたんだ。んで、チノはその時ときめいちゃったわけ」
「同性なのに? まあ、中学生時代の若き日の何とやらか」
すると、その言葉が耳に入ったチノはむすっとする。その表情を語気に入れないようにしながら、不機嫌そうに尋ねた。
「そういえば、ハルトさんがこっちに来ているということは、ラビットハウスは今可奈美さんがいるんですか?」
「いや? 可奈美ちゃんは今日非番だよ」
「え?」
その瞬間、チノの表情が死んだ。
ハルトは首を傾げながら、
「だから。今日、ココアちゃんだけだよ? ラビットハウスにいるの。俺も可奈美ちゃんもお休みだから」
「……つまり、ラビットハウスは今ココアさん一人だけですか?」
「そうなるね」
「一人……お店が……ココアさんだけ……」
その刹那。チノは白目を剥いた。ドサッと音をたてて、気絶。
「あれ? チノちゃん?」
「うわっ! チノの奴、気絶してる!」
「あわわわわ! どうしよう、どうしよう?」
「わ、私お医者さん連れてくる!」
「え? コレ、俺のせい?」
「どう考えてもお兄さんのせいだよ!」
マヤの言葉に理不尽さを感じながら、ハルトはまどかとともに病室を飛び出したのだった。
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