誕生
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お父さんの後頭部からいい音が響いたなぁ、って思ったんだけど。
思ったと同時に私はお母さんの腕の中。
そしてお父さんは地面とお友達。
………あえて突っ込まずにいこうかな。うん。
「ランちゃんに涎や鼻水がつくでしょ。まったく。仕方ない人なんだから」
語尾は弾ませているんだけど、何でか容赦なく聞こえるのは何故だろう。
うん。つっこんじゃいけない領域だよね。
再度その事を確認した私はというと、お母さんに抱っこしてもらったのを良い事に、またウトウトと惰眠をむさぼる事にした。
眠るのが本当に気持ちがいい。
真綿で包まれているかのような温かな寝心地。幸せな気持ち。赤ちゃんは眠るのが仕事だっていうけれど、まさしくその通りと実感せずにはいられない。
ここが外だという事も忘れて瞳を閉じ始めた私に、お母さんはあら、なんて言いながらあやす様に背中を優しく撫でてくれる。それが尚更睡魔を加速させるんだよなぁ。気持ちいいなぁ。
私の眠りを阻む存在などいるはずもなく、遠慮なく意識を沈ませようとした瞬間、女の人の声が耳に届く。お腹にいた頃聞いた事のある、女の人の声。
そして初めて聞く男の人の声。
「あら。クシナとミナトさん」
お母さんの発した名前に、私は沈みかけていた意識をいっきに浮上させる。
そういえばすっかりと忘れてた。
ただでさえ大きな瞳を更に見開き、私はクシナさんとミナトさんをジッと見る。お腹はまだ大きい。だからナルトはまだ、生まれてない。
生まれてはないけど、近い将来必ず起こる事がある。それを、私は知っている。
私の揺れだす心に気付いたのか、お父さんが顔を覗き込んできた。けれど、私の瞳は揺れてそれに反応を返す事が出来ない。
教えないと!
でないと、ミナトさんとクシナさんが死んじゃう!
普段は大人しい私が手足を懸命にジタバタと動かし、口をへの字に曲げて表情を歪める。お父さんは驚いたように眼を見開き、お母さんは私を落ち着かせるようにあやす手の動きを早くする。
けれど、私の動揺は収まらない。
伝えたい言葉は音にはならず、泣き声として辺り一帯に響き渡るだけ。
「ふぇぇえええ」
もどかしい気持ちに逸る私の心。
本当は色々と考えてた。
この世界を生きるにあたり、を考えてたんだけど――…けれど赤子ライフを過ごすうちに暢気に思っていた自分もいて、それに気付いた瞬間我を忘れたように叫んでた。
いい年した大人が情けないけど、精神が身体に引っ張られた状態というかなんというか。年甲斐もなく喚き散らしながら、私は逃げて逃げてと何度も訴える。
「ランセイ。嵐誓。大丈夫よ。アナタの言いたい事はわかるから落ち着いて。ね?」
ジタバタと手足を動かす私の目の前にはお
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