暁 ~小説投稿サイト~
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~
無印編
第49話:奏にとっての颯人
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んでくる。そこはとてもデリケートな部分である事が容易に想像できたので、奏は今までそこに踏み込んだことはなかった。踏み込むべきではないと察したからだ。

 そんな翼の複雑な事情と奏の感じた歯痒さに気付くことなく、響は翼の手を引っ張った。こちらの事情などお構いなしと言った様子に、しかし奏は何か肩に乗っていた何かが落ちたのを感じて笑みを浮かべながら翼と共に階段を上った。

「お、おい、立花引っ張るな。どこに……あ──」
「へぇ──」

 響に導かれた先……高台で待っていたのは、夕日に照らされた街の景色だった。その景色に翼は言葉を失い、奏は感嘆した。
 2人の反応に響は満足そうに笑みを浮かべた。

「ほら、見えますか?」
「あぁ……今日行った所が全部見える。アタシ達が守って、アタシ達が堪能した街だ」
「昨日に翼さんと奏さんが戦って守った世界なんです。だから、知らないなんて言わないでください」

 先程までとは打って変わって、優しく包み込むように紡がれる響の言葉。
 それを聞いて、奏はふと以前自分が翼に向けて言った言葉を思い出した。

──戦いの裏側には、違う世界がある……か──

 平和な日常。多くの人達は、彼女達がそれを守る為に日々戦っている事を知らないだろう。称賛してくれるのは事情を知るごく僅か。それ以外の者達にとっては、奏と翼はただのトップアーティストでしかない。

 その時、不意に奏の脳裏に颯人の顔が浮かんだ。彼は奏の裏の顔を知っている。だがどんな活躍をしたか、その結果がどんなものであるかは知らない筈だ。
 彼にこの光景を見せ、これが自分の今までの頑張りの成果であると言えばどんな反応を返すであろうか? そう思うと奏は今になって再び颯人がこの場に居ない事に、一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。

「……奏が今何を考えてるか、当ててあげようか?」
「──え?」
「颯人さんの事、考えてたんでしょ?」
「ッ!?」

 徐に翼に内心を見抜かれ、奏は言葉を失った。何も言い返さず目を見開く奏に、翼はしてやったりな笑みを浮かべた。

「やっぱりね。最近分かってきたけど、奏って颯人さんの事で悩むと決まってそういう顔するよね」
「ま、マジで? そんなに分かり易かった?」
「何時もに比べれば」

 今日は矢鱈と翼に揶揄われる事に、奏は恥ずかしさと悔しさが綯い交ぜになった気持ちを抱いた。翼の些細な変化に気付きそれを揶揄うのが2人の関係だったのに、今日はまるっきり逆だ。
 だが普段の翼とのやり取りで、こういう時相手がどんな反応を期待しているかを理解している奏はここで下手に否定することを止めた。ここは一周回って、開き直ってしまった方が追撃も少なくて済む。

「……あぁそうだよ。颯人がここに居れば、今までのア
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