第二章「クルセイド編」
第十六話「黒と金」
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「どうして…」
こんなの酷すぎる。フェイトは始めて世界を恨んだ。だって彼女は聖人君主ではないがここまでの扱いを受けなければならない罪人ではない。それにもし仮にそうだったとしてもたった9才の女の子なのだ。それがいきなりお尋ね者。その苦悩は人に計り知れる物ではない。
「これが現実だ。」
それでもリオンは揺らがない。
「僕達は追われる立場となった。」
「嘘だ。」
「本当の事だ。」
「嘘だ…嘘だ!」
リオンは手を伸ばしてやろうとした。車椅子の上からじゃフェイトの頭には届かなかった。それでも手にはとどいたので握ってやった。
「こんなの…おかしいよ…」
同じだ。リオンはそう直感的に思った。この娘…フェイトと自分は同じだ。過程は違えど世界すらも敵に回そうとしているこの少女。リオンはゆっくりと手を伸ばすために車椅子の向きを代えた。
「覚えておくといいですよフェイトちゃん。」
突然リオンの膝の上においてあるシャルティエが口を開いた。
「僕は君に頼られると…気分が良いんです。」
「シャルティエさん…」
「大丈夫ですよ、坊ちゃんと僕がいれば………坊ちゃんのこの足が治ったらどんな奴がきても叩き潰せるくらい僕達は強いですから。だから、心配はいりません。」
「最後のは何だったんだシャル。」
車椅子を治療院の脇に止め、リオン達の気分など意にも介さぬ蒼い空を見上げて相棒に訊いた。
「坊ちゃんの気持ちを代弁してあげただけですよ?」
人間にしたら実にすまし顔だったことだろう。リオンはシャルティエにコイツ…と思う事はあっても彼に腹を立てることは無い。軽くフンと鼻を鳴らすだけだ。
「て言うかなんて言うかこう…不可抗力であんな目に会う娘を見るのもつまらないじゃないですか。」
「…そうだな。」
楽しい筈が無い。リオンに過去を思い出させる。勿論目を背けてはいけないものだ、だが楽しい筈が無い。
だからこそ自分と同じ道はフェイトには歩ませたくない。その為にリオンは足が使えない=戦闘ができない今は頭をフルに回転させて今後の策を練り上げる。
「坊ちゃん。」
「…………取り合えずツァーライト一味の協力を得るのはもう確定だろうな。エレギオ・ツァーライトがどんな人間か知らないがあの男があそこまで言うのだから概ね信頼には値するのだろう。」
「しかし…」
「言うなシャル。確かにこれは博打だ。だがどの道エレギオが世間で言われるような相手なら足が動かせない、今どう足掻こうと僕たちはお終いだ。だったら信じるしかない。信じて、活路を開くしかないんだ。」
「……………確かに。」
「シャル、僕を信じてくれ。信じていれば活路はある、必ずな。」
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