暁 〜小説投稿サイト〜
幻の月は空に輝く
転生の章――始まり

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 過去を振り返ってみて。

 結構ヤンチャ、だったかな?
 と、思わなくもない。
 他には、十分恵まれてたんだなとか。
 もっと大切にしたかったな、とか。

 そういえばあのマンガの続きはどうなったかなぁ。

 なんて思いながら、薄っすらと目を開けてみれば、これ以上ない程悲痛な父親と、泣きはらした顔を隠しもしない母と姉。
 
 あぁ、うん。ごめんね? 現実逃避をしてたみたいだ。
 もう、逃避出来る現実も残されてはいないんだけど。

 手を伸ばそうとしても、管をつけられた腕は如何せん動かしづらい。例え管をつけていなくても、元々動かないだろうっていう今更な突っ込みは、この時ばかりは勘弁。
 最後に。
 最期に。
 
 大切な家族に触りたいんだ。

 大好きだって。

 親不孝でごめんねって。

 でも、幸せになってと言いたいんだ。


 頭の片隅で、子供の泣く声が聞こえる。
 元気そうな声。

 無事で良かったと、最期の時にこんなふうに思える自分で良かった。


 自分の痛みに敏感で。
 傷つくのが怖くて。
 勝手に壁を作って。

 親ですら他人だと、心のどこかで思っていた。
 きっと話した所で解ってはもらえないのだと、自己完結していた。


 あぁ。
 うん。

 ほっんとに大好きだ。

 私の心を読み取ったかのように、指先に触れてくれる温もり。
 本当に大好きだ。
 幸せになって。


 それが言葉になったのか、声に出せたのか。

 答え合わせなんて出来ないまま、私の短くも長くもない一生が幕を閉じた。


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