第91話『恋人』
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
わかったよ」
結月に洗ってもらった手前、晴登も背中を流してやらねば不公平というもの。
ため息をつきつつも、晴登は別のタオルに泡を立てて用意する。
「そ、それじゃいくよ」
「あ、ちょっと待って」
互いの場所をチェンジし、いざ洗おうとしたその時、結月が待ったをかける。
晴登は一瞬疑問に思ったが、それはすぐに氷解した。
「……はい、これでよし」
「う、そりゃそうだよな……」
そう、結月は身体に巻いていたタオルを1度解き、身体の前に当てたのだ。
背中を洗ってもらうのだからその行動は当然なのだが、顕わになった背中が何とも扇情的である。
「いつでもどうぞ」
「そ、それでは失礼します……」
タオルをゆっくりと、その背中へ押し当てる。そして、上下に撫でるように優しく動かした。
これで……合ってるだろうか。智乃の背中をこうして流したことはあるが、あれは小さい頃の話だったし、加減がわからないな。
「うん、気持ちいいよ」
「え!? そ、それなら良かった……」
まるで心の中を読まれたかのように結月がそう言うので、つい驚いてしまった。なんか莉奈っぽくなってないか?
……それにしても、小さくて軽い背中だな。強く押せば折れるのではと思うくらいに。
この背中で、彼女は今まで多くの苦難を背負ってきたのだろう。晴登もこの背中に守られたことがある。見た目以上に、大きな安心感があった。
──だから、とても愛おしく思える。
「……ねぇ、ハルトも触ってるじゃん」
「あ、あれ!? 手が勝手に!?」
「ハルトのスケベ」
「俺だけその言われよう!?」
風呂で逆上せたかそれ以外の理由か、ボーッとしていて、つい結月の背中に触れてしまっていた。
慌てて手を離すも、結月は首だけ振り返ってジト目で睨んでくる。
「もう、触りたいならそう言えばいいのに」
「いや誤解だって!」
「なら触りたくないの……?」
「う、えっと、その……」
結月に問い詰められて、晴登はしどろもどろになる。
この場合の「触れる」というのは『スキンシップ』の意味合いであるから、本来なら触れた方が良いのかもしれないが、未だに晴登の中の理性が抵抗を止めようとしない。なんだか、凄くいけないことをしているようで……。
「ハルトが望むんだったら、ボクはそれを受け入れるよ」
「え、ちょ、待っ……!」
しかし躊躇っていた晴登の手を、身体ごと振り返った結月が自ら掴んだ。そして、自分の胸元へと徐々に近づけていく。
いや待て、それはマズい。さすがに晴登でもその危険性は理解している。いかに恋人と言えど、そう易々とその壁を突破
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ