第91話『恋人』
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通り身体にお湯をかけると、ゆっくりと湯船に入ってきた。
直視をしないように晴登が背中を向けたため、2人は自然と背中合わせになる。
「ふふ、やっぱりハルトはこうすると思ったよ」
「し、しょうがないじゃん……」
浴槽はそこまで大きくはないので、背中が触れ合う。とはいえ、隔てるのはタオル1枚だ。そう意識すると、背中合わせの姿勢でもドキドキしてしまう。
「別にハルトにだったら見られてもいいのに」
「そ、そういう訳にはいかないだろ」
結月はからかうようにクスクスと笑った。くっ、完全に弄ばれている。
かといって何かができる訳でもないので、晴登は三角座りをキープ。
すると結月が唐突に一言、
「ねぇハルト、背中流してあげよっか?」
「え!?」
背中越しなのに、小悪魔の様な笑みを浮かべている結月が目に浮かぶ。一緒にお風呂に入るとはいえ、そこまでやるか普通。
「い、いや、自分でできるよ」
「そう言わずにさ。恋人なんだから」
「……それズルくない?」
「恋人だから」と言われてしまえば、晴登だって拒否がしにくい。
結局晴登は結月に根負けする形で、背中を流すことを許可したのだった。
2人は湯船から上がり、晴登は椅子に座って、結月はその後ろに膝立ちになる。
「じゃあ洗うよ」
「お、お願いします……」
結月がタオルに泡を立て、ゆっくりと晴登の背中に押し当てる。
人に背中を洗ってもらうなんて何年ぶりだろうか。しかも相手が恋人ともなると、余計にくすぐったい気分だ。
「ど、どうかな……?」
「あ、うん、いい感じだよ……」
ゴシゴシと、程よい強さで背中を擦られて心地よい。結月の思いやりが、タオルを通じて伝わってくる。
しかし、お互いに恥ずかしがるせいで、微妙に気まずい。
「……やっぱり、晴登の背中は大きいな」
「そ、そんなことないよ」
「ううん、ボクを守ってくれる、立派な背中だよ」
「ちょ……!」
突然結月が聞くだけでも恥ずかしいことを言ったかと思うと、背中に手を当ててきた。ヒンヤリとした体温が、火照った身体には余計にくすぐったい。
「ふふ、びっくりした?」
「するに決まってるじゃん!」
「そんなに怒んないでよ。ならお詫びに……前も洗ってあげようか?」
「それは結構です!」
晴登はその魅惑的な提案を全力で拒否し、タオルを半ば強制的に受け取る。
そしてそそくさと前側を洗うと、すぐにお湯で身体を流した。
「ふぅ……」
「それじゃハルト、ボクもお願いしていい?」
「えっ」
「背中だけでいいからさ」
「……はぁ、
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