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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第91話『恋人』
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色々あった林間学校がようやく終わりを迎えた。地獄の様な肝試しや規模のおかしいスタンプラリー、そして甘酸っぱい花火の時間。どれをとっても、記憶に鮮烈に残る思い出には違いない。
特に最後の出来事については、帰りのバスの中で散々いじられたが、次第に疲れで皆が眠ってしまったので、何とか難を逃れたといったところだ。

そしてバスは学校に着き、今晴登と結月は逃げるように2人で帰路についたところだ。


「はぁ、ようやく解放された……」

「大変だったね……」


2人して大きなため息をついた。
全く、クラス内でカップルが生まれただけであの騒ぎよう。子供っぽいったらありゃしない。いやまだ子供だけども。

それにしても──


「何、ハルト?」

「い、いや、何でもない……!」


度々結月をチラ見しては目を逸らす。晴登はそれを繰り返しながら、まだ実感を得られずにいた。


──結月と恋人関係になった。


そう、今までのような曖昧な関係ではなく、晴登と結月は晴れて恋人同士なのだ。距離感や接し方もこれまでのとは当然変わっていく……はず。

なのにそんな気配を全く感じないため、晴登は「あれは花火が見せてくれた夢なのではないか」と疑い始める始末だ。

かといって何か案がある訳でもなく、むしろ今まで通りなら、それはそれで晴登の心配は消えるからありがたかったりもする。


「ねぇ、ハルト」

「ん?」

「手、繋がない……?」

「え……」


いつもなら強引なくらいに手を掴んでくる結月が、今日は珍しく事前に訊いてきた。しかも何だか照れくさそうだ。
一体どうしたんだろう、と考え始めた晴登ははたと気づく。

これ、すごく恋人っぽくないか……?

手を繋いで歩くというのは、恋人の代名詞と言っても過言ではない。だからこのタイミングで訊くということは、恋人として手を繋ぎたいという、彼女の意思表示なのではないか。うん、間違いない。

そうと決まれば、晴登は男らしく彼女の手を──


「あ、う、うん、いいよ」


引ける訳もなく、手を差し出すだけに留める。
やっぱり無理だ。意識すればするほど、手を繋ぐことにブレーキがかかってしまう。恥ずかしい。


「ありがと」


そんな晴登の手を、結月は優しく握ってくれた。
こうして繋ごうと思って繋いだことは初めてだから、すごくドキドキする。


「……っ」

「え、ちょ……!」


それだけでもかなりくすぐったい気持ちなのに、なんとその後結月は指を絡めてきたのだった。
これは俗に言う、『恋人繋ぎ』というやつではなかろうか。うわ、もっと恋人っぽい……!


「「……」」


お互いに照れて、無言の時
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