プロローグ
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をあやしながらそう言う。母親と同じく白髪で白い肌の男の子。違うのは瞳の色。かつての当方と同じ赤い瞳だった。
『後、お願いね』
いつもの優しい笑顔で当方に告げる。自分が一番苦しいにも関わらず、他人を思いやる人だった。
病の悪化と難産、生まれながらの病弱な体質。それらが重なり少しして、彼女は亡くなった。無論、彼女の周りの人間は嘆き悲しんだ。当方と違い、仲間や友、周囲の人間を愛し愛された人だった。唯一の家族である彼女の双子の姉には殺されかけた。当方が元凶なのだから当然だった。憎くて憎くて仕方なかったのだろう。静寂を愛する女が怒号をあげたのだから。
当方は、赤子と共にオラリオを出た。我がファミリアは当方が彼女の看病でいない遠征で壊滅し、オラリオの空気は陰湿なものになっていったためだった。赤子を育てるには適していなかった。当方と違い、争いとは無縁の平穏で穏やかな世界ですくすくと育って欲しかった。かつての主神も伴い、のどかな農村に移住した。手には剣ではなく桑を持ち、田畑を耕し、野菜や麦を育てる生活を始めた。かつてテイムした比翼の鴉と愛馬も手伝ってくれた。不作の年が無かったのは、オラリオにいた豊穣と慈愛の女神に色々師事した賜物だろう。
季節をいくつも巡り、オラリオも少しは落ち着きを取り戻したことをかつての同僚や主神の使いをしている神から聞いた。この村には熊や弱いモンスターくらいに危機は訪れないだろう。そう思っていた頃だ。
「お願いお父さん!僕を、オラリオに行かせてください!!」
成長した我が愛しの子は、母親譲りの白髪の頭を見せ、当方に見事な土下座をしている。
いったい何を間違えたのか。叡智の結晶は応えてくれない。
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