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山爺の声
第六章

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「乳母兄弟として」
「まさにご幼少の頃から」
「左様、そしてわしが鉄砲を使うのもな」
「それで鉄砲のことをよくご存知なので」
「大声を出すよりも鉄砲の方がよいとわかっておる」
「だからですか」
「あ奴を行かせた、そしてあ奴は実際にそれをわかってな」
 そのうえでというのだ。
「やってくれるとわかっておった」
「それで送られましたか」
「うむ、そしてな」
 信長はさらに話した。
「あ奴なら仕置きもな」
「あの様にですか」
「よくすると思っておった、権六はしかとした仕置きをするが」
「あの方は」
「すぐに拳が出る」
 柴田はそうだというのだ。
「やはり道中を進む中でもわしの考えはわかってな」
「あの様にですか」
「すると思うが」
 それでもというのだ。
「一発拳骨を浴びせる位はする」
「民に迷惑をかけたと言われて」
「そこまでは及ばぬ話と思ったからな」
「権六殿は送られませんでしたか」
「左様、実際昨日も拳骨を振るった」
 柴田はとだ、信長は困った笑顔で話した。
「又左にな」
「そうされましたね」
「あ奴は厳しくすぐ怒り」
 そしてというのだ。
「人の頭に拳骨を浴びせる」
「あの方の常ですね」
「間違いなくあやかしにもする」
「だからですか」
「あ奴にはせんかった、あ奴は然るべき場所に送る」
 柴田はというのだ。
「どの者もな」
「そしてこの度は」
「勝三郎が最もよいと思ってな」
「そうされましたか」
「そういうことじゃ、では喉が渇いたからな」
 信長は話が一段落ついたところで述べた。
「茶を淹れるか」
「殿がですか」
「そうしようか、お主も飲むか」
「それでは」
 帰蝶は信長のその言葉に微笑んで頷いた、そうしてだった。
 二人は共に茶を飲んだ、織田信長が岐阜城に入って暫くしてからの話である。これもまた彼の見事な政の一つとして知られている。適材適所として。


山爺の声   完


                 2020・2・15
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