第一章
[2]次話
THE LOOK THAT KILLS
目で人を殺す、僕はそんな言葉信じられなかった。
「オカルトの方が信じられるよ」
「イーブルアイだね」
「うん、邪眼はね」
まだこちらはだ。
「ヒトラーの写真見たらそう思うよ」
「ああ、ヒトラーの眼光は鋭いね」
親友は僕の言葉に頷いてくれた、今僕達はニューヨークの洒落たカフェで共にコーヒーを飲んでいる。仕事の合間のほんの息抜きだ。ニューヨークのビジネスマンにもそうした時が必要だ。さもないと倒れてしまう。
「写真とか映像でも」
「ヒトラーはあのチョビ髭が有名だけれど」
「その実はだね」
「髭がないととんでもなく怖い顔をしているよ」
これは僕のヒトラーの顔への持論だ。
「あの目のせいでね」
「それで君は邪眼を信じるんだね」
「ヒトラーの目を見ているととね」
「オカルトな話だけれど」
「オカルト自体否定しないしね」
もっと言えば無神論者でもない、教会にも通っているし寄付もしている。
「だからだよ」
「そう言うんだね、君は」
「うん、しかし」
僕は親友にさらに話した。
「ヒトラーを出すのは極端じゃないかい?」
「邪眼の話をするのに」
「うん、それでもだよ」
「目で人は殺せない」
「言葉では出来るよ」
このことは嫌なことだが知っている、言葉で人の心を傷付けて自殺に追い込んだりすることも出来る。それで彼にも話した。
「それはね、しかしね」
「目ではだね」
「出来るものじゃないよ」
「現実的な言葉じゃないんだね」
「そうだよ」
こう彼に話した。
「どうもね」
「そうかな」
「目で人の心は殺せないよ」
僕はまたこう言った。
「ちょっとね」
「そうかな」
「そんなことは出来ないよ」
「じゃあこの言葉は間違いかな」
「そう思うよ」
こう彼に言った、この時はこれで終わって僕は仕事に戻ってその後で思い出すことはなかった。それでもだった。
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