暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜白の剣士〜
信じる者
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ないほどに…

誰も連れ戻すことはできないと思っていた。

しかし今、その背中には確かに触れる手がある。

その手は一つではなく、これまで僕が出会ってきた人達の手だった。

その中には一際強く感じる手が…

「テメェが何処に向かおうが知ったこっちゃねぇ。もう戻れねぇなんて今更だ」

もう一人の自分、向き合う事がなかったもう一人の自分。
分かっている、ここまでずっと僕を守ってきた事を。
口は悪いけど誰よりも優しく、気高く、孤高に生きる覇王。

「なら突き進め!つまらん能書きなんざ置き去りにして、テメェの檻をブチ破れッ!!」

力強く背中を押され、思わずバランスを崩すシュタイナー。
その時、二人は初めて向き合った。
野性味あふれる琥珀色の瞳は、シュタイナーを映し出す。

「僕ひとりではきっと破れない」

「だろうな、テメェは弱っちいからな!」

「君ひとりだけでも破れない。君は正確だけど時々力任せだから」

「うっせえッ!」

バーデンは悪態をつく中、シュタイナーは手を差し出した。

「でも、一人じゃないのなら…」

「…ちったぁ、マシになるかもな」

そして二人は言葉を紡ぐ

「覇王の眷族、鋼の賢者が願い奉る」

『豪雷の拳、神楽の雷龍』

「我、疾風迅雷の魂を纏いて」

『百鬼を祓い』

「覇道を統べよ」

さらに紡ぐ…

『願いを』

「祈りを」

「『結び、繋げ!』」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

歓声飛び交うフィールドに一つの光が灯る。
その光は次第に大きくなり、シュタイナーの体を包む。

「シオン、やはり僕は自分を曲げる事は出来ない」

「知ってるよ」

「そして、それを成す為には進み続けるしかないみたいだ。だから…ここで、君を超えるよ」

綺麗に生きたいのならば汚れよ

何度も挫け、大いに足掻き、悩め

全力でいられた者こそが一番綺麗で格好が良いのだ

今、己を変えたいと思っているのなら…

汚れろ、泥にまみれて

突き通せ、己の思いを

叫べ、声尽きるまで

「聖槍、抜錨ッ!!」

突如として光は砕け散り、装いを新たにしたシュタイナーがそこにはいた。

髪はエメラルドグリーンの光を帯び、先ほどまで青白かった電流もそれに同調するように色を変える。
いつもの鎧は腰からマントが伸び、その下からは竜の尻尾を覗かせる。

「ここからは、俺達(僕達)の時間だ!!」

進め、想いが形を成すまで…
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